既治療のKRASG12C変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、adagrasibはドセタキセルと比較して無増悪生存期間(PFS)を統計学的に有意に延長し、新たな安全性上の懸念は認められなかった。フランス・パリ・サクレー大学のFabrice Barlesi氏らKRYSTAL-12 Investigatorsが、22ヵ国230施設で実施した第III相無作為化非盲検試験「KRYSTAL-12試験」の結果を報告した。adagrasibはKRASG12C阻害薬で、KRASG12C変異を有する進行NSCLC患者を対象とした第II相試験において有望な結果が示されていた。Lancet誌2025年8月9日号掲載の報告。
化学療法と免疫療法の前治療歴があるNSCLC患者を対象、主要評価項目はPFS
KRYSTAL-12試験の対象は、
KRASG12C変異を有する局所進行または転移のあるNSCLCで、プラチナ製剤を含む化学療法および抗PD-1または抗PD-L1抗体による前治療歴があり、ECOG PSが0または1の成人患者であった。
研究グループは適格患者を、adagrasib(1回600mg、1日2回経口投与)群またはドセタキセル(75mg/m
2、3週ごとに静脈内投与)群に2対1の割合で無作為に割り付け、病勢進行、許容できない毒性発現、担当医師または患者の判断、あるいは死亡まで投与を継続した。無作為化は中央双方向Web応答システムを用い、地域(アジア太平洋地域以外vs.アジア太平洋地域)および前治療(逐次投与vs.併用投与)で層別化した。
ドセタキセル群では、盲検下独立中央判定(BICR)によるRECIST 1.1に基づく病勢進行が認められた場合、adagrasibへのクロスオーバーを可とした。
主要評価項目は、ITT集団(無作為化した全患者)におけるBICRによるRECIST 1.1に基づくPFSであった。安全性は、試験薬が投与されたすべての患者を対象に評価した。本試験は現在も進行中である(新規登録は終了)。
PFS中央値はadagrasib群5.5ヵ月、ドセタキセル群3.8ヵ月
2021年2月23日~2023年11月16日に1,021例がスクリーニングされ、453例がadagrasib群(301例、66%)またはドセタキセル群(152例、34%)に無作為化された。それぞれ298例(99%)および140例(92%)が試験薬の投与を受けた。
追跡期間中央値7.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.8~8.7)において、ITT集団でのBICRによるPFS中央値はadagrasib群5.5ヵ月(95%CI:4.5~6.7)、ドセタキセル群3.8ヵ月(2.7~4.7)であり、ハザード比(HR)は0.58(95%CI:0.45~0.76、p<0.0001)であった。治験担当医師評価によるPFSも同様の結果が得られた(5.4ヵ月vs.2.9ヵ月、HR:0.57)。
副次評価項目であるBICRによる奏効率も、adagrasib群がドセタキセル群と比較し有意に高かった(32%[95%CI:26.7~37.5]vs.9%[5.1~15.0]、オッズ比:4.68[95%CI:2.56~8.56]、p<0.0001)。
治療関連有害事象(TRAE)は、adagrasib群(298例)で280件(94%)、ドセタキセル群(140例)で121件(86%)報告された。Grade3以上のTRAEは、adagrasib群で140件(47%)、ドセタキセル群で64件(46%)報告され、主なものはadagrasib群でALT上昇(8%)、AST上昇(6%)、下痢(5%)、ドセタキセル群で好中球数減少(11%)、好中球減少症(10%)、無力症(10%)であった。
治療関連死は、adagrasib群で4例(1%、てんかん、肝不全、肝虚血および原因不明が各1例)、ドセタキセル群で1例(1%、敗血症)が報告された。
(ケアネット)