北京では22年11月以降、新たな変異株は認められず/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2023/02/16

 

 中国・北京市で2022年11月14日以降に流行している新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、その大部分がBA.5.2とBF.7で、新たな変異株出現のエビデンスはないことを、中国・Beijing Center for Disease Prevention and Control(北京市疾病予防管理センター)のYang Pan氏らが報告した。約3,000件のSARS-CoV-2について完全ゲノムシークエンスを行い明らかにした。著者は、「今回のデータは北京市のみのものだが、人流の頻度および伝染力が強い系統が循環していたことから、結果は“中国の現状”とみなすことができる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年2月8日号掲載の報告。

2022年採取のSARS-CoV-2をゲノム解析、系統発生学的・人口動態的分析を実施

 研究グループは、本検討の背景について次のように述べている。「中国でのダイナミックな国家的ゼロCOVID戦略によって、2022年12月以前の北京市では、SARS-CoV-2の持続的局地的感染は起きていなかった。しかし、外来ケースは過去3年にわたり、たびたび検出されてきた。最近、中国ではCOVID-19症例が急増しており、SARS-CoV-2の新たな変異株出現が懸念されているが、北京市では3年の間、ウイルスゲノムの監視をルーチンに行ってきている。なお続くCOVID-19パンデミックへの世界的対応には、世界的に収集された最新のウイルスゲノムシークエンスをローカルデータのそれと比較した時空間解析が重要である」。

 本検討では過去3年間にルーチンに採取が行われた、北京市で発生したSARS-CoV-2(国内症例・外来症例の両者をカバー)の呼吸器検体の中から、2022年1月~12月の収集サンプルを用い、その中から無作為に抽出して分析を行った。

 次世代シークエンシングによりSARS-CoV-2をゲノム解析し、さらに質の高い完全シークエンスを用いて、系統発生学的・人口動態的分析を行った。

11月14日以降の国内症例、90%がBA.5.2またはBF.7

 2,994件の完全SARS-CoV-2ゲノムシークエンスが得られ、そのうち2,881件について質の高い完全シークエンスとさらなる分析を行った。加えて2022年11月14日~12月20日にかけて、413件の新たな検体(国内症例350、外来症例63)のシークエンシングを行った。

 シークエンシングを行ったSARS-CoV-2ゲノムは、すべて123 PANGO系統に属しており、それ以外の持続的優勢株や新系統は見つからなかった。北京市では、現在SARS-CoV-2のBA.5.2とBF.7が主流で、11月14日以降の国内症例の90%(350例中315例)を占めており、11月14日以降に、BA.5.2とBF.7の株保有者数が増加していた。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 寺田 教彦( てらだ のりひこ ) 氏

筑波大学 医学医療系 臨床医学域 感染症内科学 講師

筑波メディカルセンター病院臨床検査医学科/感染症内科