アレルギー予防のため、ピーナッツは1歳までに摂取すべき?/JAMA

オーストラリアでは、2016年、幼児の食事ガイドラインが改訂され、ピーナッツアレルギーの予防のために生後12ヵ月までのピーナッツ導入が推奨されるようになった。同国マードック子ども研究所のVictoria X. Soriano氏らは、今回、この改訂の前後におけるピーナッツアレルギーの発生状況を調査し、ピーナッツの早期導入の推奨により有病率が0.5%低下したが、これは統計学的に有意な差ではないことを確認した。研究の詳細は、JAMA誌2022年7月5日号で報告された。
10年間隔の2つの調査結果を比較
研究グループは、オーストラリアにおける生後12ヵ月までのピーナッツ導入の推奨が、幼児のピーナッツアレルギー発生の抑制に寄与するかの検証を目的に、一般住民を対象とした2つの横断的調査の結果を比較した。解析には、経時的な変化を評価するために、10年の間隔をあけて同じ枠組と方法を用いて参加者の登録が行われた2つの調査(2007~11年と2018~19年に参加者を登録)のデータが用いられた。オーストラリア・メルボルン市とその近郊の施設で、ピーナッツ曝露やアレルギーの既往歴を問わずに、生後11~15ヵ月の幼児が募集された。
質問票を用いて、人口統計学的因子や食物アレルギーのリスク因子、ピーナッツ導入、アレルギー反応に関するデータが収集された。
すべての幼児でピーナッツの皮膚プリックテストが行われ、陽性者は食物経口負荷試験を受けた。有病率の推定値は、経時的な人口統計学的因子の変化を考慮して標準化された。
リスク因子は増加したが、アレルギーは増加せず
解析には7,209例の幼児が含まれた。このうち2018~19年の調査に参加した幼児が1,933例(年齢中央値12.5ヵ月[IQR:12.2~13.0]、男児51.8%)、2007~11年は5,276例(12.4ヵ月[12.2~12.9]、50.8%)であった。オーストラリアで食物アレルギーのリスク因子とされる東アジア系の幼児(両親が東アジア生まれ)は、経時的に増加していた(2007~11年の10.5%から、2018~19年に16.5%に増加、p<0.001)。幼児の家系や他の人口統計学的因子の変化を標準化すると、ピーナッツアレルギーの有病率は、2018~19年の調査では2.6%(95%信頼区間[CI]:1.9~3.4)であり、2007~11年の3.1%(2.7~3.6)と比較して有意な差はみられなかった(群間差:-0.5%、95%CI:-1.4~0.4、p=0.26)。
2018~19年の調査では、オーストラリア系の幼児は、より早い年齢でピーナッツを導入したほうがピーナッツアレルギーのリスクが低く、生後12ヵ月以降の導入と比較した生後6ヵ月以下での導入の補正後オッズ比(OR)は0.08(95%CI:0.02~0.36)、同様に7~<10ヵ月での導入の補正後ORは0.09(0.02~0.53)であった。一方、東アジア系の幼児では、より早期のピーナッツ導入とピーナッツアレルギーの発生には有意な関連はなかった。
著者は、「ガイドラインによる早期ピーナッツ導入の推奨により、1歳時におけるピーナッツアレルギーの発生は減少も増加もしなかった」とまとめ、「2018~19年の調査で食物アレルギーのリスク因子である東アジア系の幼児が増加したにもかかわらず、ピーナッツアレルギーは増加しておらず、幼児期にピーナッツ製品を早期に広く導入することで、これを実施しない場合に起こりえたピーナッツアレルギーの発生が抑制された可能性がある」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)
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