donanemab、早期アルツハイマー病の認知機能/日常生活動作を改善/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2021/03/29

 

 早期の症候性アルツハイマー病(AD)患者の治療において、donanemabはプラセボと比較して、76週時の認知機能と日常生活動作を組み合わせた複合評価尺度(iADRS)が有意に良好であることが、米国・Eli LillyのMark A. Mintun氏らが実施したTRAILBLAZER-ALZ試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年3月13日号に掲載された。donanemabは、N末端がピログルタミン酸化されたアミロイドベータ(Aβ)のエピトープを標的とするヒト化IgG1抗体。第Ib相試験では、アミロイド陽性の軽度認知障害または軽症~中等症のアルツハイマー型認知症患者において、1回の投与でアミロイドプラーク量を減少させることが確認されている。

北米56施設のプラセボ対照無作為化第II相試験

 本研究は、早期の症候性AD患者におけるdonanemabの安全性、有害事象、および有効性の評価を目的とする二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験であり、米国とカナダの56施設で患者登録が行われた(米国Eli Lillyの助成による)。

 対象は、年齢60~85歳、PET検査で脳へのタウおよびアミロイドの沈着が認められ、認知症発症前の症候性AD(prodromal AD、明らかな軽度認知障害を認める)または認知症を伴う軽度AD(認知症とADの診断基準を満たし、症状の重症度が十分に高い)で、精神状態短時間検査(MMSE)スコア(0~30点、点数が高いほど認知機能が優れる)が20~28点の患者であった。

 被験者は、donanemab(初めの3回は700mg、それ以降は1,400mg)を4週ごとに最長72週、静脈内投与する群、またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。

 主要アウトカムは、76週時の統合AD評価尺度(iADRS、0~144点、点数が低いほど、認知機能障害や日常生活動作の障害が大きい)のスコアのベースラインからの変化とした。副次アウトカムは、CDR-SB(Clinical Dementia Rating Scale-Sum of Boxes)、ADAS-Cog13(13-item cognitive subscale of the Alzheimer's Disease Assessment Scale)、ADCS-iADL(Alzheimer’s Disease Cooperative Study-Instrumental Activities of Daily Living Inventory)、MMSEのスコアの変化、およびPETで評価したアミロイドとタウの量の変化であった。

ARIA-Eの頻度が高い、重篤な有害事象に差はない

 257例が登録され、131例(平均年齢[±SD]75.0±5.6歳、女性51.9%、APOE ε4保因者72.5%)はdonanemab群、126例(75.4±5.4歳、51.6%、74.2%)はプラセボ群に割り付けられた。

 ベースラインの平均iADRSスコアは、donanemab群が106.2点、プラセボ群は105.9点であった。ベースラインから76週までの平均スコアの変化は、donanemab群が-6.86点、プラセボ群は-10.06点であり、donanemab群のほうが減少幅が小さく、認知・身体機能の低下が少なかった(群間差:3.20点、95%信頼区間[CI]:0.12~6.27、p=0.04)。

 副次アウトカムの、ベースラインから76週までの平均スコアの変化の群間差は、CDR-SBスコアが-0.36点(95%CI:-0.83~0.12)、ADAS-Cog13スコアが-1.86点(-3.63~-0.09)、ADCS-iADLスコアが1.21点(-0.77~3.20)、MMSEスコアは0.64点(-0.40~1.67)であった。

 florbetapir PETで測定したアミロイドプラーク値は、76週時にdonanemab群がプラセボ群よりも85.06センチロイド低下していた(-84.13 vs.0.93センチロイド)。donanemab群のアミロイド陰性(アミロイドプラーク値<24.10センチロイドと定義)の割合は、24週時が40.0%、52週時が59.8%、76週時は67.8%だった。

 また、flortaucipir PETで評価したタウ総量は、76週時にdonanemab群がプラセボ群よりも0.01低下しただけで、実質的な差はなかった。

 死亡(donanemab群0.8% vs.プラセボ群1.6%)や重篤な有害事象(17.6% vs.17.6%)の発生について両群間に差はなかった。アミロイド関連画像異常(ARIA)のうち浮腫(ARIA-E)は、donanemab群で頻度が高かった(26.7% vs.0.8%)。

 著者は、「ADにおけるdonanemabの有効性と安全性を評価するには、より長期で、より大規模な試験を要する。現在、本試験の参加者を対象に、follow-on試験(TRAILBLAZER-EXT試験)への患者登録を進めている」としている。

(医学ライター 菅野 守)