FFR閾値を順守したPCI実施でアウトカム改善/JAMA

日常診療で1枝血管の血流予備量比(FFR)測定を受けた冠動脈疾患患者において、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の実施は実施しない場合と比較し、FFR閾値から虚血性病変と判定された患者で主要有害心血管イベント(MACE)の発生率が低く、非虚血性病変と判定された患者では同イベントの発生率が高いことと有意に関連していた。カナダ・トロント大学のManeesh Sud氏らによる検討の結果で示された。FFRは、冠動脈狭窄が心筋虚血を誘発する可能性を評価し、PCIの適応を判定するために用いられる侵襲的検査である。しかし、PCIの適応に関するFFRの閾値が日常的な介入診療で順守されているか、あるいは閾値の順守が良好な臨床アウトカムと関連しているかはわかっていなかった。著者は、「今回の解析結果は、エビデンスに基づくFFR閾値に従ったPCIの実施を支持するものである」とまとめている。JAMA誌オンライン版2020年11月13日号掲載の報告。
虚血性(FFR≦0.80)vs.非虚血性(FFR>0.80)、PCI実施有無のMACE発生を比較
研究グループは、2013年4月1日~2018年3月31日の期間に、カナダ・オンタリオ州で1枝のFFR評価を受けた冠動脈疾患成人患者(ST上昇型心筋梗塞を除く)を対象に、後ろ向き多施設コホート研究を実施した(2019年3月31日まで追跡)。FFR閾値に基づき2つのコホートに分け(虚血性≦0.80、非虚血性>0.80)、治療選択のバイアスを考慮して傾向スコアのIPTW(逆確率治療重み付け)法を用い、MACE(死亡、心筋梗塞、不安定狭心症、または緊急冠動脈血行再建術)に関してPCIありとPCIなしを比較した。
虚血性コホート、PCIありはなしより5年アウトカムが有意に良好
解析対象は全体で9,106例(平均[±SD]年齢65±10.6歳、女性35.3%)であった。虚血性FFRコホートは2,693例で、このうち75.3%がPCIを受け、24.7%は内科的治療のみであった。このコホートでは、PCIありはPCIなしと比較して5年後のMACE発生率およびハザード比(HR)が有意に低かった(31.5% vs.39.1%、HR:0.77、95%信頼区間[CI]:0.63~0.94)。
非虚血性FFRコホートは6,413例で、このうち12.6%がPCIを受け、87.4%が内科的治療のみで治療された。このコホートでは、PCIありはPCIなしと比較して5年後のMACE発生率およびハザード比が有意に高かった(33.3% vs.24.4%、HR:1.37、95%CI:1.14~1.65)。
(医学ライター 吉尾 幸恵)
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コメンテーター : 野間 重孝( のま しげたか ) 氏
栃木県済生会宇都宮病院 院長
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