進行前立腺がんへのレルゴリクス、持続的アンドロゲン除去療法で好成績/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2020/06/15

 

 進行前立腺がん患者の治療において、レルゴリクス(進行前立腺がん治療薬としての適応は未承認)はリュープロレリンに比べ、テストステロンをより迅速かつ持続的に抑制し、主要有害心血管イベント(MACE)のリスクをほぼ半減させることが、米国・Carolina Urologic Research CenterのNeal D. Shore氏らの検討「HERO研究」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年6月4日号に掲載された。リュープロレリンなどの黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)作動薬の注射剤は、投与初期においてテストステロン値が上昇し治療効果発現の遅延が認められるが、前立腺がんにおけるアンドロゲン除去療法の標準薬とされる。一方、レルゴリクスは、経口ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)受容体拮抗薬で、下垂体からの黄体形成ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)の放出を迅速に阻害し、テストステロン値を低下させることが、複数の第I相および第II相試験で確認されている。

2剤を直接比較する無作為化第III相試験

 本研究は、日本を含む世界の155施設が参加した非盲検無作為化第III相試験で、2017年4月~2018年10月の期間に患者登録が行われた(Myovant Sciencesの助成による)。

 対象は、年齢18歳以上、組織学的または細胞学的に前立腺の腺がんと確定され、1年以上の持続的アンドロゲン除去療法が可能と判定された患者であった。

 被験者は、レルゴリクス(120mg、1日1回、経口)またはリュープロレリン(3ヵ月ごとに注射)の投与を受ける群に2対1の割合で無作為に割り付けられ、48週の治療が実施された。

 主要エンドポイントは、48週を通じてテストステロン値が去勢レベル(<50ng/dL)で持続することとした。副次エンドポイントは、主要エンドポイントの非劣性、4日目のテストステロン値の去勢レベルおよび15日目の高度去勢レベル(<20ng/dL)の達成などであった。また、テストステロン回復に関してサブグループ解析を行った。

主要エンドポイント:96.7% vs.88.8%、MACEリスク54%低下

 930例が登録され、レルゴリクス群に622例、リュープロレリン群には308例が割り付けられた。ベースラインの全体の年齢中央値は71歳(範囲:47~97)で、日本人患者が11.5%含まれた。前立腺特異抗原(PSA)の平均値はレルゴリクス群が104.2±416.0ng/mLと、リュープロレリン群の68.6±244.0ng/mLに比べ高かったが、中央値ではそれぞれ11.7ng/mL、9.4ng/mLであり、類似していた。追跡期間中央値は52週だった。

 去勢レベル(<50ng/dL)のテストステロン値が48週間持続した患者の割合は、レルゴリクス群が96.7%(95%信頼区間[CI]:94.9~97.9)、リュープロレリン群は88.8%(95%CI:84.6~91.8)であった。群間の差は7.9ポイント(95%CI:4.1~11.8)であり、レルゴリクス群の非劣性と優越性が示された(優越性のp<0.001)。

 主な副次エンドポイントである4日目のテストステロン値が去勢レベル(<50ng/dL)の患者の割合(レルゴリクス群 56.0% vs.リュープロレリン群 0%)、15日目のテストステロン値が去勢レベルの患者の割合(98.7% vs.12.0%)、15日目のPSA奏効(PSA値の50%以上の低下)が29日目にも確認された患者の割合(79.4% vs.19.8%)、15日目のテストステロン値が高度去勢レベル(<20ng/dL)の患者の割合(78.4% vs.1.0%)、24週時の平均FSH値(1.72 IU/L vs.5.95 IU/L)はいずれも、レルゴリクス群がリュープロレリン群に比べて良好であった(いずれもp<0.001)。

 テストステロン値の回復を追跡した184例のサブグループでは、投与中止後90日目の平均テストステロン値はレルゴリクス群が288.4ng/dL、リュープロレリン群は58.6ng/dLであった。90日目に280ng/dL(正常範囲の下限値)以上に回復した患者の割合は、レルゴリクス群が54%、リュープロレリン群は3%だった(名目上のp=0.002)。

 有害事象の発生率は、両群でほぼ同様であった。最も頻度の高い有害事象はホットフラッシュ(レルゴリクス群54.3%、リュープロレリン群51.6%)だった。致死的有害事象が、レルゴリクス群7例(1.1%)およびリュープロレリン群9例(2.9%)で認められた。48週時のMACE(非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、全死因死亡)の発生率は、それぞれ2.9%および6.2%であった(ハザード比:0.46、95CI:0.24~0.88)。

 著者は、「進行前立腺がん男性の経口薬による治療では、アドヒアランスの低下が懸念されるが、この研究では99%以上であり、注射剤とほぼ同等であった」としている。

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コメンテーター : 宮嶋 哲( みやじま あきら ) 氏

東海大学医学部外科学系腎泌尿器科学 主任教授