自然気胸の保存的治療、介入に劣らない/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2020/02/10

 

 原発性自然気胸への保存的治療の有効性は、介入的治療に対し非劣性であり、重篤な有害事象のリスクはより低いことが、西オーストラリア大学のSimon G A Brown氏らが行った非盲検無作為化非劣性試験「PSP試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年1月30日号に掲載された。原発性自然気胸の治療では介入的なドレナージが行われることが多く、手術的介入へ進む場合もあるが、胸腔チューブ挿入には痛みが伴い、臓器損傷や出血、感染を引き起こす可能性がある。また、入院を要することも多く、手術には合併症や医療費の問題が伴う。一方、自然気胸への保存的治療を支持するコホート研究のエビデンスはあるが、介入的治療と比較した無作為化対照比較試験のデータはないという。

自然気胸の介入的治療と保存的治療を再膨張で評価

 本研究は、原発性自然気胸の治療において、保存的治療が介入的治療の許容可能な代替治療となるかを検証した試験で、オーストラリアとニュージーランドの39施設の参加の下、2011年7月~2017年3月の期間に患者登録が行われた(救急医療財団などの助成による)。

 対象は、年齢14~50歳、合併症がなく、初めて診断された中等度~高度の片側性(肺の一方)の原発性自然気胸(Collins法で胸部X線画像上の32%以上)の患者であった。

 被験者は、ただちに胸腔チューブを用いて気胸への介入を行う群(介入群)、または保存的に経過観察を行う群(保存的治療群)に無作為に割り付けられ、12ヵ月間の追跡が実施された。

 主要アウトカムは、治療医の判定による8週間以内の肺の再膨張(胸部X線画像)とした。

自然気胸の保存的治療の有用性に中等度のエビデンス

 自然気胸患者316例が無作為化の対象となり、保存的治療群に162例(平均年齢26.1±8.7歳、男性87.7%)、介入群には154例(26.4±8.7歳、84.4%)が割り付けられた。

 保存的治療群では、137例(84.6%)は介入を受けなかったが、25例(15.4%)がプロトコールで事前に規定された理由により気胸の治療のための介入を受けた。介入群では、10例(6.5%)がすべての介入を断り、これらの患者は保存的に治療された。8週目の評価が、56~63日に行われた患者が16例(保存的治療群11例、介入群5例)、9週目以降となった患者が6例(5例、1例)認められた。

 データが得られなかった保存的治療群37例と介入群23例を欠測値として扱い、完全ケース分析を行ったところ、8週間以内に再膨張が達成されたのは、保存的治療群が125例中118例(94.4%)、介入群は131例中129例(98.5%)であり(リスク差:-4.1ポイント、95%信頼区間[CI]:-8.6~0.5、非劣性のp=0.02)、95%CIの下限値は事前に規定された非劣性マージン(-9ポイント)の範囲内であったため、保存的治療群の介入群に対する非劣性が示された。

 感度分析では、8週目の評価を63日まで延長すると、再膨張は保存的治療群が136例中129例(94.9%)、介入群は136例中134例(98.5%)で達成され、非劣性は維持されていた(リスク差:-3.7ポイント、95%CI:-7.9~0.6)。一方、56日以降のすべての欠測データを治療失敗として補完して感度分析を行ったところ、再膨張が達成されたのは、保存的治療群が143例中118例(82.5%)、介入群は138例中129例(93.5%)であり(リスク差:-11.0ポイント、95%CI:-18.4~-3.5)、95%CIの下限値は非劣性マージンの範囲を超えていた。

 X線画像所見で効果が得られるまでの期間中央値は、保存的治療群が30日(IQR:25~54)、介入群は16日(12~26)であった(ハザード比[HR]:0.49、95%CI:0.39~0.63)。また、8週目までに症状が完全に消失した患者は、保存的治療群が147例中139例(94.6%)、介入群は137例中128例(93.4%)であり(リスク差:1.1ポイント、95%CI:-4.4~6.7)、症状消失までの期間中央値はそれぞれ14.0日(95%CI:12~19)および15.5日(12~23)であった(HR:1.11、95%CI:0.88~1.40)。

 有害事象は、保存的治療群が13例に16件、介入群は41例に49件認められた。保存的治療群は介入群に比べ、重篤な有害事象(3.7% vs.12.3%、相対リスク:3.30、95%CI:1.37~8.10)や12ヵ月以内の気胸再発(8.8% vs.16.8%、1.90、1.03~3.52)のリスクが低かった。

 著者は、「主要アウトカムは、欠測データに関する慎重な仮定について統計学的に頑健ではなかったものの、原発性自然気胸の保存的治療の有用性に関して中等度のエビデンスがもたらされた」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 小林 英夫( こばやし ひでお ) 氏

防衛医科大学校 内科学講座 准教授

J-CLEAR推薦コメンテーター