慢性高血圧の妊婦、加重型妊娠高血圧腎症発生は約8倍/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2014/04/30

 

 慢性高血圧の妊婦では有害転帰が高率にみられることが、英国・ロンドン大学のKate Bramham氏らによるメタ解析(55試験・妊娠約80万例)の結果、明らかにされた。米国での試験集団に絞って同国一般集団と比較した分析からは、加重型妊娠高血圧腎症リスクが約8倍高いことが示された。また、早産、低体重児、およびNICU入室リスクは約3倍、周産期死亡リスクは約4倍高いことなども示された。結果を踏まえて著者は、「慢性高血圧の妊婦については、出産前サーベイランス強化の必要性が示された」と述べるとともに、「今回の所見をカウンセリングで通知し、慢性高血圧を有する女性における至適な母性保健、薬物治療、妊娠前治療に寄与すべきである」と提言している。BMJ誌オンライン版2014年4月15日号掲載の報告より。

55試験、妊娠79万5,221例をメタ解析
 研究グループは、慢性高血圧を有する女性の妊娠に伴う合併症について正確に評価すること、また米国一般妊婦集団などとの比較により、妊娠前および出産前マネジメント戦略に情報を提供することを目的としたシステマティックレビューとメタ解析を行った。

 Embase、Medline、Web of Scienceをソースに、各媒体の発刊から2013年6月までに刊行された論文を言語を問わずに検索し、関連論文の参考文献や追加報告の手動検索も行った。対象試験は、慢性高血圧の妊婦が参加している、後ろ向きおよび前向きコホートの住民ベース無作為化試験を適格とした。

 報告されていた各妊娠アウトカムの発生をプールして分析し、また米国で行われた試験結果について、米国一般集団(2006年National Vital Statistics Report)の発生と比較した。

 解析には、適格条件を満たした55試験、妊娠79万5,221例が組み込まれた。

早産・低体重児・NICUリスクは約3倍、周産期死亡リスクは約4倍
 結果、慢性高血圧の妊婦は、次のアウトカムが高かった。加重型妊娠高血圧腎症25.9%(95%信頼区間[CI]:21.0~31.5%)、帝王切開41.4%(同:35.5~47.7%)、37週未満の早産28.1%(同:22.6~34.4%)、出生時体重2,500g未満16.9%(同:13.1~21.5%)、NICU入室20.5%(同:15.7~26.4%)、周産期死亡4.0%(同:2.9~5.4%)であった。ただし、これらのアウトカムの発生報告には、いずれもかなりの不均一性があった(τ2=0.286~0.766)。そのため、メタ回帰分析による人口統計学的要因の特定はできなかった。

 米国で行われた試験の被験者と同国一般集団との比較からは、慢性高血圧を有する妊婦のリスクが以下について高いことが示された。加重型妊娠高血圧腎症の相対リスクは7.7(95%CI:5.7~10.1)、帝王切開1.3(同:1.1~1.5)、37週未満の早産2.7(同:1.9~3.6)、出生時体重2,500g未満2.7(同:1.9~3.8)、NICU入室3.2(同:2.2~4.4)、周産期死亡4.2(同:2.7~6.5)であった。

(武藤まき:医療ライター)

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コメンテーター : 三浦 伸一郎( みうら しんいちろう ) 氏

福岡大学医学部心臓・血管内科学 主任教授

J-CLEAR評議員