高齢者の認知機能維持にゴルフやウォーキングが有望か

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/11/22

 

 歳を重ねる中で思考力を保つためにするべきことは何なのか。その答えは、ゴルフ、2本のポールを持って行うノルディックウォーキングや通常のウォーキングであることが、新たな研究で明らかになった。東フィンランド大学(フィンランド)のJulia Kettinen氏らによるこの研究結果は、「BMJ Open Sport & Exercise Medicine」に10月12日掲載された。

 一過性の有酸素運動により、運動の強度や実施時間、種類に関係なく認知機能が向上する可能性が過去の研究で示唆されている。この研究では、5日間にわたるランダム化クロスオーバー試験により、認知的要求度の高い3種類の高齢者に適した有酸素運動(18ホールのゴルフ、6kmのノルディックウォーキング、6kmのウォーキング)が認知機能に及ぼす即時的な効果が検討された。対象者であるゴルフを趣味とする健康な高齢者25人(平均年齢69±4歳、男性16人)には、3種類の運動の全てを、各運動の間に1日のウォッシュアウト期間を挟みながら、実際の生活環境の中で自分のペースで行ってもらった。運動の際には、フィットネスモニターにより距離、時間、ペース、エネルギー消費量、歩数を測定し、ECG(心電図)センサーにより心拍数も測定した。

 認知機能については、高齢者の視空間認知機能の評価に広く用いられているトレイル・メイキング・テスト(Trail Making Test;TMT)のパートA(TMT-A、注意力や処理速度を評価する)とパートB(TMT-B、作業の切り替え能力や、作業記憶と認知的柔軟性を要する実行機能および高次の認知機能を評価する)により評価を行い、それぞれのテストを完了するのに要した時間を計測した。また、対象者から運動の前後で血液を採取し、運動による効果を反映する物質と見なされているエクサカイン(運動応答性生理活性物質)として、BDNF(脳由来神経栄養因子)とCTSB(カテプシンB)の測定を行った。

 その結果、3種類の有酸素運動の全てで、運動前と比べて運動後にはTMT-Aを完了するのに要した時間が有意に短縮することが明らかになった(ゴルフ:−4.43±1.5秒、ノルディックウォーキング:−4.63±1.6秒、ウォーキング:−6.75±2.26秒)。ノルディックウォーキングとウォーキングでは、TMT-Bを完了するのに要した時間についても有意に短縮していた(同順で、−9.62±7.2秒、−7.55±3.2秒)。TMT-AおよびTMT-B完了に要した時間の合計は、全ての運動で、運動前と比べて運動後に有意な短縮が認められた(ゴルフ:−9.23±4.7秒、ノルディックウォーキング:−14.26±7.4秒、ウォーキング:−14.28±8.20秒)。ただし、TMT-B完了に要した時間からTMT-A完了に要した時間を差し引いた値に有意な短縮が認められたのはノルディックウォーキングのみだった(−4.97±7.26秒)。一方で、BDNFとCTSBの値に運動の即時的な影響は認められなかった。

 Kettinen氏は、「これらの結果は、ゴルフ、ノルディックウォーキング、通常のウォーキングなどの有酸素運動が、高齢者の認知機能の維持と向上に有効であることを強調するものだ」と述べている。なお、本研究には、英エディンバラ大学とチューリッヒ工科大学(スイス)の研究者も参加している。

[2023年10月18日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら