健康な人でも少量の習慣的な飲酒で血圧上昇

高血圧でない人が少量のアルコールを習慣的に飲み続けていると、血圧が上昇する可能性のあることが明らかになった。モデナ・レッジョ・エミリア大学(イタリア)のMarco Vinceti氏らの研究によるもので、詳細は「Hypertension」に7月31日掲載された。
アルコール摂取が血圧を高めることが知られているが、摂取量がわずかな場合にもそのような影響が生じるのか否かは明確になっていない。そこでVinceti氏らは、飲酒量と血圧との関連を縦断的に調査した過去の研究のデータを用いた用量反応メタ解析によって、この点を検討した。PubMedまたはEmbaseに、2023年5月9日までに収載された論文から、研究参加者が健康な成人であることなどの包括基準を満たす、日本、米国から各3件、韓国から1件、計7件の研究報告を抽出。研究参加者数は合計1万9,548人、追跡期間は中央値5.3年(範囲4~12)だった。
アルコールを全く飲まない場合を基準として、1日の摂取量が12gの場合は追跡期間中に、収縮期血圧(SBP)に1.25mmHg、拡張期血圧(DBP)には1.14mmHgの差が生じていた。アルコール12gとは、12オンス(約350mL)の缶ビールに含まれる量よりもやや少ない量に過ぎない。また、1日のアルコール摂取量が48gの場合は、SBPに4.90mmHg、DBPに3.10mmHgの差が生じていた。Vinceti氏は「結論として、飲酒と血圧管理は両立しない。つまり、習慣的な飲酒によって高血圧のリスクが上昇し、心臓病や脳卒中のリスクが増加する」と総括している。
では、リスクを高めない飲酒量とはどのくらいだろうか?Vinceti氏は、「少なければ少ないほうが良いことは間違いなく、さらに良いのは飲まないことだ。われわれの研究結果は、たとえわずかであってもアルコールを摂取していれば、時間の経過とともに血圧が高くなるという直線的な正の関連を示している」と解説。ただし同氏は、「飲酒が高血圧の唯一の原因というわけではない。また、少量の飲酒と血圧上昇リスクとの関連は、大量飲酒ほどには明確でないことも確かなことだ」と付け加えている。なお、飲酒以外の高血圧の原因として、米疾病対策センター(CDC)は、非健康的な食事、肥満、運動不足、喫煙などを挙げている。
論文共著者の1人で世界高血圧連盟の会長でもある米テュレーン大学公衆衛生・熱帯医学分野のPaul Whelton氏は、飲酒によって血圧が上昇する理由について、「完全に明らかにされているわけではないが、最も可能性の高い理由は、アルコールによって交感神経が活性化することではないか」と解説。また同氏は飲酒に関してシンプルなアドバイスも述べている。それは、「現在、習慣的に飲酒していない場合は、飲み始めないことだ。飲酒の習慣がある場合は、断酒または節酒すべきた」というもの。同氏はこのアドバイスを、「高血圧患者ばかりでなく、血圧が正常範囲内ながらも高いという人に対して、特に強く伝えたい。なぜなら、そのような人が飲酒習慣を続けた場合、血圧上昇の経時的変化がより強く現れるからだ」と話している。
また、本研究には関与していない、米国心臓協会(AHA)のボランティアスタッフで米ニューヨーク大学グロスマン医学部のNieca Goldberg氏は、「重要なメッセージは、飲酒は高血圧や心臓病の予防にはならないという点だ」と述べ、地中海食などの健康的な食事と減塩、運動の励行、睡眠時間の確保を勧めている。
[2023年7月31日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら
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