EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)のうち、L858R変異陽性例はexon19欠失例と比較してEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)への感受性が低く、予後不良である可能性が指摘されている。一方で、エルロチニブ+ラムシルマブの有用性を検討した国際共同第III相試験「RELAY試験」1)では、L858R変異陽性例における全生存期間(OS)中央値が52ヵ月であったことが報告され、EGFR-TKIへのラムシルマブの上乗せによりexon19欠失例と同等の予後が、L858R変異陽性例において得られる可能性が考えられた2)。
そこで、L858R変異陽性例を対象に、エルロチニブ+ラムシルマブ併用療法で治療を開始し、治療中にT790M変異が検出された場合にオシメルチニブへ移行する逐次治療戦略の有用性について、オシメルチニブとの比較により検討する国内第III相試験「REVOL858R試験」が実施された。その結果、エルロチニブ+ラムシルマブ後にオシメルチニブを投与する治療戦略は、初回オシメルチニブ単剤療法と比較して、治療戦略成功期間(TFS:Time to Failure of Strategy)を改善しなかった。米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)において、試験事務局を務めた原武 直紀氏(九州がんセンター 呼吸器腫瘍科)が結果を報告した。
試験デザイン:国内第III相無作為化非盲検試験
対象:未治療の進行または再発を有するEGFR遺伝子L858R変異陽性NSCLC患者
試験群(エルロチニブ+ラムシルマブ群):エルロチニブ(150mg、1日1回)+ラムシルマブ(10mg/kg、2週ごと)→再生検またはリキッドバイオプシーによる遺伝子検査→T790M陽性例ではオシメルチニブ(80mg、1日1回)、T790M陰性例ではプロトコール治療を終了 116例
対照群(オシメルチニブ群):オシメルチニブ(80mg、1日1回) 116例
評価項目:
[主要評価項目]TFS(治療開始からオシメルチニブで病勢進行または死亡まで、もしくはオシメルチニブ導入不可の場合は初回の病勢進行または死亡までの期間)
[副次評価項目]OS、無増悪生存期間(PFS)、安全性など
主な結果は以下のとおり。
・患者背景は両群でおおむねバランスがとれていた。全体の年齢中央値は73歳、女性の割合は62%であった。ベースライン時に脳転移を有していた割合は29%であった。
・主要評価項目であるTFS中央値は、エルロチニブ+ラムシルマブ群16.6ヵ月、オシメルチニブ群14.8ヵ月であり、エルロチニブ+ラムシルマブ群の有意な改善は認められなかった(ハザード比[HR]:1.03、95%信頼区間[CI]:0.78~1.38)。
・TFSに関する事前に規定されたサブグループ解析でも、明確な治療効果の差が示される集団はみられなかった。
・副次評価項目のOS(HR:0.98、95%CI:0.66~1.45)、PFS(同:1.08、0.81~1.44)も両群間に差はみられなかった。
・安全性について、Grade3以上の有害事象は、エルロチニブ+ラムシルマブ群72%、オシメルチニブ群44%に発現し、エルロチニブ+ラムシルマブ群で多かった。治療中止に至った有害事象は、それぞれ36%、21%にみられた。一方で病勢進行による治療中止は、エルロチニブ+ラムシルマブ群で23%にとどまり、オシメルチニブ群では52%であった。
・間質性肺疾患(ILD)は、エルロチニブ+ラムシルマブ群2%、オシメルチニブ群10%に認められ、エルロチニブ+ラムシルマブ群のほうが少ない傾向がみられた。
・エルロチニブ+ラムシルマブ群でT790M変異の検査が実施された割合は41%で、T790M変異陽性は全体の13%にとどまった。
本結果について、原武氏は「オシメルチニブ群のPFS中央値(14.8ヵ月)は、FLAURA試験3)の報告(14.4ヵ月)と同様であったが、エルロチニブ+ラムシルマブ群のPFS中央値(14.9ヵ月)は、RELAY試験の報告(19.4ヵ月)よりも数値的に短かった」と指摘した。また「EGFR遺伝子L858R変異を有するNSCLCには、アンメットニーズが存在するため、今回のシークエンス治療の長期的なOSへの影響について、長期追跡が進行中である」とまとめた。
また、会場から今後の臨床現場におけるエルロチニブ+ラムシルマブ療法の役割を問われ、原武氏は「本試験はネガティブな結果であったことを考慮すると、EGFR遺伝子L858R変異を有するNSCLCの標準治療は、MARIPOSAレジメン(アミバンタマブ+ラゼルチニブ)もしくはFLAURA2レジメン(オシメルチニブ+化学療法)であると考える。ただし、エルロチニブ+ラムシルマブはILDの発現割合が低かったことを考慮すると、一部の患者でこのレジメンの恩恵を得られる可能性がある。恩恵が得られる患者集団を明らかにするため、追加のサブグループ解析やOSに関する長期追跡が進行中である」と述べた。
(ケアネット 佐藤 亮)