医療者向けChatGPT登場!米国在住の医師が特別レポート

提供元:ケアネット

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公開日:2026/05/08

 

 多くのAIツールを医療者が使うようになり、医療者の情報検索に特化したOpenEvidenceなどの専門AIツールも急速に普及するなか、4月末に汎用型AIツール・ChatGPTが医療者向けのChatGPT for Cliniciansをリリース。現時点では使用は米国在住の医師に限られるものの、医療AIの「本命」となるのかが注目される。CareNet.comで「タイパ時代のAI英語革命」「医療者のためのAI活用術」などを連載する原田 洸氏(米国・マウントサイナイ医科大学病院)が使用感を特別レポート。

ChatGPT for Cliniciansとは何か

 ChatGPTをはじめとした生成AIを、日常生活や臨床業務の中で活用している医療者は、すでに少なくないのではないでしょうか。そうした中、米国で新たにリリースされたのが、医療者向けに設計された “ChatGPT for Clinicians” です1)

 一言で言えば、医学分野に特化したChatGPTであり、医師をはじめとする医療従事者が臨床疑問を調べることを想定してつくられたツールです。日々の診療で生じる疑問に対し、タイムリーに、かつ信頼できる情報に基づいて回答することを目的としています。現時点では利用対象は米国の医療従事者に限定されていますが(資格認証あり)、私は現在米国の病院で勤務しているため、実際に使用する機会がありました。ここでは、その概要と使用感について共有したいと思います。

通常のChatGPTと何が違うのか

 通常のChatGPTは、事前学習された膨大な情報や、Web検索で得られた情報をもとに回答を生成します。これは非常に便利な一方で、臨床現場でそのまま使うには注意が必要です。なぜなら、回答の根拠となる情報に誤りが含まれていたり、Web検索で信頼性の低い情報が拾われたりした場合、その内容が回答に反映される可能性があるからです。たとえば、「StageIVの大腸がんの治療は?」と入力した際に、十分なエビデンスのない自費診療を行うクリニックの情報が検索結果として参照されてしまえば、標準治療やガイドラインから大きく外れた回答が生成されるリスクがあります。

 この課題に対応しようとしているのが、ChatGPT for Cliniciansです。米国の主要学会のガイドライン、CDC、FDA、査読済み論文など、信頼性の高い医療情報をもとに回答を生成することで、臨床的な正確性を高める設計になっています。

実際に使ってみた印象は

 使い方は非常にシンプルです。通常のChatGPTと同じ画面上で、「○○の治療は?」「□□の薬は△△の状況では中止すべきか?」といった日常診療で生じる疑問を入力すると、数十秒から1分程度で回答が生成されます。英語で入力すれば英語で、日本語で入力すれば日本語で回答されるため、言語面での使いやすさも通常のChatGPTと大きく変わりません。

 実際に使用した印象としては、回答の質は高く、少なくとも私が試した範囲では、明らかなハルシネーション(AIが事実と異なる情報をもっともらしく出力する現象)はほとんど見られませんでした。また、回答には関連する論文やガイドラインへのリンクが示されるため、最終的な確認を自分で行いやすい点も大きな利点です。普段からChatGPTを使い慣れている医療者であれば、ほとんど抵抗なく導入できるツールだと感じました。

対抗馬はOpenEvidence

 もっとも、医療分野に特化した生成AIツール自体がまったく新しいわけではありません。近年、米国では OpenEvidence という医療特化型の生成AIが急速に普及しており、すでにこちらを利用している医療者にとっては、ChatGPT for Cliniciansは大きな目新しさを感じないかもしれません2、3)。OpenEvidenceは、NEJMやJAMAなどの主要医学誌とも提携しており、これらのジャーナルに掲載された論文の図表にプラットフォーム上でアクセスできる点が強みです。また、私が勤務する医療機関では、OpenEvidenceがすでに電子カルテ上で利用可能になっており、臨床現場での活用の幅はますます広がっています4)。なお、OpenEvidenceは日本からも利用可能であるため、日本の医療者にとっては、現時点ではChatGPT for Cliniciansよりも身近な選択肢と言えるでしょう。

今後注目したいポイント

 現時点では、ChatGPT for Cliniciansが既存の医療特化型AIサービスをすぐに置き換える存在になるとは言い切れないでしょう。しかし、ChatGPTがもともと持っている画像生成、音声会話、動画生成、文書作成などの多様な機能と組み合わされることで、将来的な可能性は大きく広がると考えられます。

 今後は、OpenEvidenceとの競争、電子カルテへの統合、日本を含む米国外への展開などが注目されます。生成AIが医療現場に入り込む流れは、もはや一時的なブームではなく、避けては通れない変化になりつつあります。医療者としては、その利点と限界を理解しながら、どのように安全かつ有効に使いこなすかが問われる時代に入っているのだと思います。

(ケアネット)