長鎖脂肪酸代謝異常症患者のエネルギー代謝を改善/ウルトラジェニクス ジャパン

提供元:ケアネット

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公開日:2026/08/06

 

 希少疾患分野に特化し、治療薬の研究開発・製造・販売を行うウルトラジェニクス ジャパンは、希少疾患である長鎖脂肪酸代謝異常症(LC-FAOD)について、2026年5月21日に治療薬トリヘプタノイン(商品名:ドジョルビ内用液100%)を発売した。この発売によせ、都内でメディアセミナーを開催した。セミナーでは、LC-FAODの診療やトリヘプタノインの概要などについて専門医がレクチャーを行った。

日本でも年間数十人の新生児が長鎖脂肪酸代謝異常症と診断

 「エネルギー代謝の破綻にどのように向き合うか-長鎖脂肪酸代謝異常症とトリヘプタノイン-」をテーマに村山 圭氏(順天堂大学大学院医学研究科 小児科学講座 /難治性疾患診断・治療学 教授)が、LC-FAODの病態や診療の実際、トリヘプタノインの特徴や臨床試験の概要などを説明した。

 人間は生存において空腹時には脂肪をエネルギー変換することで、生き延びることができるように進化した。この脂肪酸のミトコンドリア内輸送やβ酸化が障害される先天代謝異常症が脂肪酸代謝異常(FAOD)であり、「カルニチン回路異常」と「脂肪酸β酸化酵素異常」の2種類がある。

 その中でもLC-FAODは、長鎖脂肪酸代謝障害を特徴とし、生命を脅しかねない常染色体潜性遺伝性疾患群である。本症はエネルギー産生の急性クリーゼと慢性的なエネルギー不足を引き起こす。
約100例
 米国では2,000~3,500例の患者が推計され、年間約100例の新生児がLC-FAODと確定診断を受けている。また、わが国では年間10~50例の発症患者が推定されている。LC-FAODの症状は通常、出生直後および乳児期早期に始まるが、一部には疾患の進行が遅い場合があり、後年になるまで診断されないケースもある。現在は、新生児マススクリーニングでほとんどの患者が診断されている。LC-FAODの症状は、肝臓、心臓、骨格筋など、脂肪酸酸化によるエネルギー産生に依存する組織に発現する。たとえば、肝臓では低ケトン性低血糖や肝機能障害などが起き、心臓では肥大型および/または拡張型心筋症や心嚢液貯留、心不全などが起きる。そのほか、神経症状、骨格筋ミオパチー、網膜疾患、消化器症状など多臓器に多彩な症状を来す。患者は、こうした症状により日常のQOL低下や過大な医療費の負担、そして、潜在的に高い死亡率につながる急性症状と慢性症状に直面している。

 とくに急性症状では、横紋筋融解症、心筋症、または低ケトン性低血糖症などが発現するとともに、LC-FAODの一部では、突発的な意識障害やけいれんが起こることもあり、入院、救急外来の受診、緊急の治療介入、突然死に至ることもある。LC-FAOD患者の多くは、継続的な疾病の管理、心の健康管理、不安への対応のほか、トリガー回避などのために生活が制限されるとともに、重大な合併症や生命を脅かす合併症を経験している。

 LC-FAODの治療はこれまで対症療法が中心であり、基本的には「長時間の空腹の回避」「糖中心のエネルギー摂取(頻回摂取)」「MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)による代替エネルギー」「ベザフィブラート(酵素誘導)」「シックデイ対応」の5つが行われている。しかしながら、患者の根本的なエネルギー不足は解決されておらず、脂肪摂取制限の有効性に明確なエビデンスがないなどの課題を村山氏は指摘する。

大事なことはエネルギー代謝の正常化

 こうした問題の解決の一助として開発されたのがトリヘプタノインである。トリヘプタノインは、2つの代謝経路でエネルギーの産生に寄与し、脂肪酸代謝の改善とエネルギー産生の向上が期待されている。

 トリヘプタノインは、炭素数7のヘプタン酸3分子がグリセロールで結合した合成中性脂肪で、LC-FAODに対して迅速かつ効率的なエネルギー源となる。経口摂取後に腸管内より吸収・代謝されたヘプタン酸は、長鎖脂肪酸とは異なり直接ミトコンドリア内に拡散移動し、生体エネルギー産生回路であるTCAサイクルの基質であるアセチルCoAとTCAサイクルの中間体であるスクシニルCoAを生成し、その後、速やかにTCAサイクルに入ることで患者のエネルギー産生に働く。

 トリヘプタノインの海外第II相試験(UX007-CL201試験)では、LC-FAOD患者におけるトリヘプタノインの有効性および安全性評価を目的に24週間投与後の効果などが試験された。対象は、現行の管理法(低脂肪・高炭水化物食による管理、MCTオイルまたはMCT含有ミルクのいずれかを投与)にもかかわらず、重篤な臨床症状を示す生後6ヵ月以上のLC-FAOD患者29例。4週間の導入期間中、患者は現行の管理を継続し、導入期間終了後、ベースライン時に偶数鎖MCT(以降MCT)の使用を中止し、他の食事制限を維持しつつ、トリヘプタノインの投与を開始した。24週間投与し、その後、さらに54週間の継続期間において投与を継続した(合計78週間)。その結果、主要臨床イベントの年換算発現率では、トリヘプタノイン投与前(29例)1.69回/年に対し、トリヘプタノイン投与開始後(同)では0.88回/年となり、48.1%減少していた(p=0.0208)。また、年換算発現日数では、トリヘプタノイン投与前(29例)5.96回/年に対し、トリヘプタノイン投与開始後(同)では2.96回/年となり、50.3%減少していた(p=0.0284)。安全性について主な副作用は、下痢、腹痛、上腹部痛などの消化器症状が多く、死亡などの重篤なものはなかった。

 最後に村山氏は「トリヘプタノインはエネルギー代謝ネットワークを再構築する可能性があり、エネルギー代謝の“断絶”を“連結”へと取り戻す治療ができる。新生児スクリーニングで本症と診断された患者に早く治療が届くように『こどもの未来に光を!』」と語り、講演を終えた。

(ケアネット 稲川 進)