早期TN乳がん術前療法におけるペムブロリズマブ投与時刻とpCRの関連/日本臨床腫瘍学会

提供元:ケアネット

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公開日:2026/04/08

 

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の投与時刻が治療効果と関連する可能性が示唆されているが、乳がんにおけるエビデンスは限られている。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)では、早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の術前療法におけるペムブロリズマブの投与時刻と病理学的完全奏効(pCR)の関連について後ろ向きに検討した2つの単施設研究の結果を、国立がん研究センター中央病院の齋木 琢郎氏とがん研究会有明病院の久野 真弘氏がそれぞれ発表した。

投与が1時間早まるごとにpCR達成のオッズが1.5倍に~国立がん研究センター中央病院 齋木氏

 齋木氏らは、2022年8月~2025年8月に国立がん研究センター中央病院でKEYNOTE-522レジメンによる術前療法を受け、その後手術を受けたTNBC患者102例を後ろ向きに検討した。投与時刻はペムブロリズマブ投与完了時刻とした。主な結果は以下のとおり。

・投与時刻の中央値は午後12時48分(範囲:午前10時13分~午後3時40分)であった。
・102例中53例(52.0%)がpCRを達成した。
・単変量解析では、組織学的グレード3、核グレード3、ペムブロリズマブ投与時刻の中央値がpCRと有意な関連が認められた。
・多変量解析では、組織学的グレード3、投与時刻の中央値がpCRと有意な関連がみられた。調整オッズ比は1.007(1分早まるごと)であり、これは投与が1時間早まるごとにpCR達成のオッズが1.5倍(1.00760)高まることを示す。
・各薬剤(ペムブロリズマブ、カルボプラチン、パクリタキセル、AC)の相対用量強度と投与時刻に有意な関連はみられなかった。

 齋木氏は「本結果は、ペムブロリズマブを早い時刻に投与することが、pCRの達成率向上に関連する可能性を示唆しているが、カットオフ値は見いだせなかった」とまとめ、午後の投与が良好であった、あるいは差がなかったという結果を示した先行研究との違いについては、「先行研究のコホートでは主に午後に投与していたのに対し、われわれのコホートは主に午前中に投与していたことがこの違いを説明するかもしれない」と考察した。

適切なカットオフ時刻ならびに治療のどのフェーズに注目するかを後ろ向きに検討~がん研究会有明病院 久野氏

 久野氏らは、ペムブロリズマブの投与時刻とpCRの関連を、とくに治療フェーズの影響に注目して検討した。2022年10月~2024年12月にがん研究会有明病院でKEYNOTE-522レジメンによる術前療法を開始したTNBC患者99例を後ろ向きに検討した。ペムブロリズマブの投与開始時刻を電子カルテから抽出、4つのフェーズ(全サイクル、初回サイクル、カルボプラチン+パクリタキセルフェーズ、アントラサイクリンフェーズ)についてROC解析を行い、最適なカットオフ値を決定した。主な結果は以下のとおり。

・99例中65例がpCRを達成した。
・全サイクルにおける投与開始時刻の分布を見ると、pCR群とnon-pCR群の間で有意な差は認められなかった。ROC曲線から導き出された時刻(正午)をカットオフ値として適用しても両群間でpCR率に差はなかった。
・4つの治療フェーズで投与開始時刻とpCRの関連を調べたところ、カルボプラチン+パクリタキセルフェーズのみが午前11時のカットオフ値でpCR率と有意な関連を示し、午前11時より早い時刻で開始した群は95.2%(20/21例)、遅い時刻で開始した群は57.7%(45/78例)であった(p=0.0007)。内的妥当性に関してはMaxstat解析とBootstrap(1,000回)を施行し、安定性を確認した。早い時刻で開始した群と遅い時刻で開始した群の背景因子は、Ki-67値を除いてバランスが取れていた。
・多変量解析において、カルボプラチン+パクリタキセルフェーズにおける投与開始時刻とpCRの関連は、Ki-67値および生殖細胞系列BRCA病的バリアントの有無を調整後も維持された。腫瘍浸潤リンパ球データが利用可能なサブセット(63例)では関連が有意ではなくなったが、早い時刻で開始した群が8例と症例数は限られていた。

 久野氏は「全サイクルを通じたペムブロリズマブの投与開始時刻はpCRと関連していなかったが、カルボプラチン+パクリタキセルフェーズにおいて午前11時より早いペムブロリズマブ投与開始は高いpCR率と関連している可能性が示唆された。あくまで単施設後ろ向き研究のため、外的妥当性や前向き研究のデータが必要である」とまとめた。

2つの研究の違い

 2演題の発表後における質疑応答で、齋木氏は2つの研究の違いについて「久野先生の解析手法は先行研究の手法を踏襲し、科学的なアプローチだが、われわれの研究の目的は投与タイミングの重要性を結論付けることではなく、その重要性を探索することであった」と述べた。久野氏は「pCRに対する投与時刻の効果を評価する手法が異なっていた。われわれはROC曲線(Youden index)などの解析手法を用いて最適なカットオフ値を決定したのに対し、齋木先生は1時間ごとの変化がpCRのオッズ比に与える影響を解析していた」と説明し、「手法は異なるが共に後ろ向き研究を行っているので、今後ぜひ協力したい」と呼びかけた。

(ケアネット 金沢 浩子)