タルラタマブが小細胞肺がん2次治療に加わる意義/アムジェン

提供元:ケアネット

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公開日:2026/05/01

 

 2026年3月、タルラタマブ(商品名:イムデトラ)が小細胞肺がん(SCLC)の2次治療に承認された。アムジェンが主催したメディアセミナーでは、関西医科大学呼吸器腫瘍内科学講座の倉田 宝保氏と肺がん患者会のワンステップの長谷川 一男氏が登壇。医師と患者の立場から、新たな展開の意義を語った。

小細胞肺がん治療における免疫チェックポイント阻害薬の導入

 SCLCは肺がんの10〜15%を占める。喫煙との関連が高く、病勢進行も速い。進行の速さに加え、喫煙歴のある患者が多いため、咳や痰などの症状がSCLCによるものなのか、その鑑別は容易ではない。発見時には片肺にとどまっている限局性であっても、もう一方の肺に浸潤した進展型となっていることがほとんどだ。

 1960年代、SCLCの治療には薬物療法が有効であることが証明されている。しかし、予後は不良で、1981年当時の生存期間中央値(MST)は、限局型が14ヵ月、進展型では7ヵ月にとどまっていた。その後、同時化学放射線療法(シスプラチン+エトポシド+放射線)により限局型のMSTは27.3ヵ月に、シスプラチン+イリノテカン療法により進展型のMSTは12.8ヵ月に延びるが、それ以降、近年まで成績は向上しなかった。

 そのような中、SCLCにも免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が導入された。ICIは腫瘍変異量が多い腫瘍に有効性が高い。喫煙との関連が深いため腫瘍変異量が多いSCLCではICIの効果が期待されていた。

 しかし、SCLCにおけるICIの効果は限定的であった。進展型SCLCの1次治療でICIを化学療法に上乗せしても、5年生存率の改善は10〜12%にとどまる。理由の1つにSCLCがCold tumorであることもあげられている。SCLCでは、T細胞受容体およびT細胞ががん細胞を認識するMHCクラスIの発現が低く、PD-L1発現も低い。さらに、腫瘍へのリンパ球浸潤が少ないことが明らかになっている。

 十分とは言えなくとも選択肢が増えた1次治療に比べ、2次治療以降はさらに深刻な状況である。日本におけるSCLC2次治療の標準療法であるアムルビシン単剤のMSTは6〜9ヵ月程度にとどまる。そのような状態にもかかわらず、アムルビシン承認以降、約20年にわたって2次治療に新規薬剤は登場しなかった。

タルラタマブによる課題の克服と2次治療への導入

 こうした課題を背景に、タルラタマブが登場した。タルラタマブはSCLC細胞に高発現するDLL3とT細胞表面のCD3に結合する二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)である。

 タルラタマブはDLL3を介してT細胞をがん細胞に近接させ、T細胞を活性化・増殖させるとともに、炎症性サイトカインなどの放出を誘発してがん細胞のアポトーシスをもたらす。「免疫的にColdなtumorをHotに変え、免疫療法を作用させていく薬」と倉田氏は説明した。

 タルラタマブの承認根拠となったDeLLphi-301試験では、3次治療以降のSCLC患者を対象に単剤投与が行われた。奏効率(ORR)は41.4%、生存期間中央値(OS)は14.3ヵ月という成績を示した。「3次治療の患者は免疫系が疲弊していて免疫治療が効きにくい状態にある。そういう状態でこれだけの効果を示すことは非常に興味深い」と倉田氏は評価する。

 今回、2次治療適応追加の根拠となったのが、タルラタマブ単剤と化学療法を比較したDeLLphi-304試験である。主要評価項目であるOS中央値は、タルラタマブ群の13.6ヵ月に対し、化学療法群では8.3ヵ月。ハザード比は0.60(95%信頼区間:0.47〜0.77)、p<0.001と、タルラタマブによる有意なOS延長が示された。一方、サイトカイン放出症候群(多くはGrade2以下)は半数以上に認められ、発熱、食欲減退、味覚不全などの有害事象が報告されている。

 倉田氏は「これからのSCLCの治療に免疫療法は欠かせない。有害事象を管理してタルラタマブを使用するのはわれわれの責務」とし、また「免疫療法はより早い段階での投与が効果を高めることがわかっている。今後タルラタマブの2次治療以前の使用が実現することを強く期待している」と述べた。

SCLC患者が直面する現実

 長谷川 一男氏らが運営する肺がん患者の会ワンステップでは、2ヵ月に1度「おしゃべり会」を設けている。同会にSCLC患者も参加するが、1〜2回で来られなくなることが多かったという。

 疾患自体の厳しさにとどまらず、SCLCの患者・家族が直面する現実は深刻だ。患者の喫煙が発症に関連することから、家族は患者を責め、患者は罪悪感に苛まれる。

 2016年の日本肺癌学会学術集会。プログラムの中に「30年間変わらない小細胞肺がんの治療」と題したセッションが設けられていたという。当時は分子標的薬や免疫療法が非小細胞肺がんの景色を変えていた時期であり、SCLCが取り残されていた現実を表しているといえるだろう。

30年変わらなかった治療に光が差し始めた

 転機が訪れたのは2019年だった。世界肺がん学会(WCLC2019)の最重要演題が集まるPresidential Symposiumで、SCLCの免疫治療の結果が発表された。「長く止まっていた領域にようやく光が差し始めた瞬間だった」と長谷川氏は当時の興奮を伝える。

 その後、SCLCに対してタルラタマブが臨床導入される。長谷川氏によれば、タルラタマブが臨床で使われるようになってから、治療中も仕事を続けているSCLC患者に出会うこともあるという。

 SCLC治療に選択肢が増えることは「仕事ができる、家族との時間を守れる」など患者・家族の日常生活にも大きな恩恵をもたらす。「以前は生きられるかどうかで精一杯というのがSCLC患者さんの実情だったが、今はどう生きるかを考える余地が出てきた」と長谷川氏は強調した。

 長谷川氏は最後に、「タルラタマブのような新薬が3次治療から2次治療、そして1次治療へと移行していき、SCLC患者の現実をどんどん変えてくれることを願っている」と結んだ。

(ケアネット 細田 雅之)