がん関連VTE発症予測に包括的ゲノムプロファイリングは有用か/日本循環器学会

提供元:ケアネット

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公開日:2026/03/24

 

 がん患者における重要な心血管合併症の1つに静脈血栓塞栓症(VTE)があり、2023年に公開されたASCO Guidelineにおいても、このようなVTEの高リスク患者への1次予防が推奨されている。しかし、がん関連VTEの発症を正確に予測できるモデルは現段階では確立されていない。そこで今回、中村 栞奈氏(京都大学医学部附属病院 循環器内科)がVTE発症の予測として包括的ゲノムプロファイリングを用いた最新知見について、3月20~22日に開催された第90回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies 1において報告した。なお、本結果はJournal of thrombosis and haemostasis誌オンライン版2026年3月20日号に同時掲載された1)

 本研究は、VTEの発症とがん関連遺伝子変異との潜在的な関連性を調査することを目的として、FoundationOne CDxによる包括的ながんゲノムプロファイリング(CGP)を受けたVTE既往歴のない成人がん患者を対象に、324個のがん関連遺伝子の中からVTEに関連する遺伝子変異を探索した。主要評価項目はVTEの発症。

 主な結果は以下のとおり。

・京都大学医学部附属病院において、2015年3月~2024年6月の期間にCGPが行われた1,079例のうち、適格基準を満たした412例について検討した。
・対象者の平均年齢は59歳、199例(48%)が女性であった。
・がんの遠隔転移は319例(77%)、372例(90%)が化学療法を行っていた。
・観察期間の中央値は693日で、検体採取後に59例(14%)にVTEを認めた。また、累積イベント発症率は1年で8.3%、3年で16.6%、5年で26.0%であった。
・VTEを発症した患者の原発がんの部位は、膵臓14例(24%)、胆道7例(12%)、子宮7例(12%)、肺6例(10%)であった。
・年齢と性別を共変量とし、Cox比例ハザードモデルを用いたがん遺伝子変異の調整ハザード比(HR)を算出したところ、KRAS(HR:2.35、95%信頼区間[CI]:1.38~4.01)、CDKN2A(HR:2.06、95%CI:1.21~3.52)、TP53(HR:1.71、95%CI:0.99~2.93)など、VTEリスクの高さと関連する可能性のあるゲノム変異を特定した。
 
 中村氏は「包括的なゲノムプロファイリングに基づくこの新しい研究は、VTEの発症に関連するいくつかのゲノム変異を明らかにし、従来の臨床指標にがん関連遺伝子変異情報を統合することで、より精緻なリスク層別化が可能となることが期待される」とコメント。ただし、本研究の制限について「対象者が少なく、がんの病期や治療内容による調整ができていないため、潜在的バイアスが存在した可能性がある」と述べた。

 最後に同氏は「本研究を踏まえより大規模な研究を行っていくために、新たなコホートで検証するためにONCO CARDIO Registryを始めた。この研究では、日本全国の約40施設の大学病院・がんセンター・大規模基幹病院が集結し、約2万例(最大総数)のがん患者の登録を目指しており、世界的にも最大規模のがん関連遺伝子情報を含めた腫瘍循環器領域の疫学研究となる見込みである」と今後の展望を語った。

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(ケアネット 土井 舞子)