甲状腺ホルモン製剤であるレボチロキシンは、60歳以上の甲状腺機能低下症では一般に生涯にわたって継続投与されるが、長期の投与が常に必要かは定かでないという。オランダ・ライデン大学医療センターのJanneke Ravensberg氏らは、安定用量のレボチロキシンの投与を1年以上受けていた甲状腺機能低下症の60歳以上の集団では、その約4分の1が、投与中止から1年後も適切な甲状腺機能を維持し、甲状腺関連の生活の質(QOL)にも臨床的に意義のある変化を認めないことを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年4月6日号で報告された。
オランダのプライマリケアの単群前向きコホート研究
研究グループは、レボチロキシンの投与を受けている甲状腺機能低下症の年齢60歳以上の集団における投与中止の成功率を明らかにする目的で、オランダの58の一般診療施設で非盲検単群前向きコホート研究を実施した(ZonMwの助成を受けた)。2020年1月~2022年7月に被験者の登録を行った。
対象は、少なくとも1年間、安定用量(150μg/日以下)のレボチロキシンの投与を受け、甲状腺刺激ホルモン(TSH)値が10mIU/L未満の60歳以上の地域在住者とした。
レボチロキシンの用量を段階的に減量し、各減量時から少なくとも6週間が経過した後に甲状腺機能検査を行った。
主要アウトカムは、レボチロキシンの投与を中止して1年後に、投与中止を継続しており、かつTSH値が10mIU/L未満で、遊離サイロキシン値が基準値の範囲内にある被験者の割合であった。
投与量が少ないほど、中止の成功率が高い
370例を登録した。ベースラインの年齢中央値は70.5歳(四分位範囲[IQR]:65.7~75.7、範囲:60.6~89.0)で、294例(79.5%)が女性であった。平均レボチロキシン投与量は84(SD 31)μg/日であり、TSH値中央値は2.2mIU/L(IQR:1.1~3.5、範囲:0.02~9.69)、平均遊離サイロキシン値は1.21(SD 0.18)ng/dLであった。このうち366例が1年後の最終追跡調査を完了した。
370例中95例(25.7%、95%信頼区間[CI]:21.5~30.4)が、1年後の時点でレボチロキシンの投与中止を継続しており、その時点のTSH値中央値は5.03mIU/L(範囲:1.56~9.40)、平均遊離サイロキシン値は1.01ng/dL(範囲:0.80~1.43)であった。
レボチロキシンの投与中止に成功した95例のうち、46例(48.4%、95%CI:38.6~58.3)の1年後のTSH値は4.8mIU/L未満であった。
また、ベースラインのレボチロキシン投与量が少ないほど、投与中止の成功率が高かった。レボチロキシン50μg/日以下の投与を受けていた88例のうち、56例(63.6%)がこの治療の中止に成功し、75μg/日以下の投与を受けていた176例では、79例(44.9%)が中止の成功に至った。
介入に関連した重篤な有害事象はない
甲状腺関連QOLは、ベースラインからその後1年の時点まで、全体として臨床的に意義のある変化を認めなかった。また、レボチロキシン中止の成功例と不成功例に層別化しても、QOLの差が臨床的に意義のある最小変化量(MCID)を超えることはなかった。
平均12.9ヵ月の追跡期間中に、16例に17件の重篤な有害事象(予定外の入院15件、死亡2件)が発現したが、試験介入に関連したものはなかった。
著者は、「60歳以上、とくにレボチロキシン50μg/日以下の投与を受けている患者において、レボチロキシン治療の継続の必要性について評価を行うべきである」としている。
(医学ライター 菅野 守)