HER2変異陽性の進行・転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、ゾンゲルチニブは迅速かつ持続的な客観的奏効と、無増悪生存期間(PFS)の改善をもたらし、脳転移に対する有効性も期待できることを、米国・University of Texas M.D. Anderson Cancer CenterのJohn V. Heymach氏らBeamion LUNG-1 Investigatorsが、「Beamion LUNG-1試験」の結果で示した。ゾンゲルチニブは経口投与型の不可逆的チロシンキナーゼ阻害薬で、野生型の上皮成長因子受容体(EGFR)には、ほとんど作用せずにHER2を選択的に阻害するため、関連する毒性作用を最小限に抑えるとされる。研究の成果はNEJM誌2026年4月30日号に掲載された。
国際的な第Ia/Ib相多コホート試験
Beamion LUNG-1試験は、オーストラリア、欧州、アジア(日本を含む)、米国の53施設で実施した第Ia/Ib相多コホート試験(Boehringer Ingelheimの助成を受けた)。2023年11月~2025年8月に、進行または転移のある
HER2変異陽性非扁平上皮NSCLC患者を登録した。
本論では、未治療の患者(コホート2)および活動性の脳転移を有する患者(探索的コホート4)の解析結果が報告された。
両コホートとも、コホート1の用量設定解析で決定された投与法(21日を1サイクルとし、ゾンゲルチニブ120mgを1日1回、経口投与、病勢進行・同意の撤回・許容できない毒性作用の発現まで投与を継続)による治療を受けた。
主要評価項目は盲検化された独立中央レビューによる確定された客観的奏効、副次評価項目はPFSなどであった。
未治療例の1次治療(コホート2)、確定された客観的奏効は76%
コホート2は、原発巣への治療を受けていない患者74例(年齢中央値67歳[四分位範囲[IQR]:35~88]、女性37例[50%])であった。安定した無症候性の脳転移(既治療か否かは問わない)を有する患者も含めた。
データカットオフ日(2025年8月21日)の時点で、確定された客観的奏効が56例(76%、95%信頼区間[CI]:65~84)で得られた。8例(11%)が完全奏効、48例(65%)が部分奏効だった。標的病変の総腫瘍径の、ベースラインからの最大の変化率中央値は-59%(範囲:-4~-100)であった。
また、奏効期間中央値は15.2ヵ月(95%CI:9.8~評価不能[NE])、PFS中央値は14.4ヵ月(11.1~NE)だった。
一方、全Gradeの有害事象は73例(99%)に発現し、このうちGrade3以上は33例(45%)であった。治療関連有害事象は67例(91%)に認め、このうちGrade3以上は14例(19%)だった。
活動性脳転移(コホート4)、確定された頭蓋内客観的奏効が47%
コホート4は、原発巣への治療の有無にかかわらず、活動性の脳転移(既治療か否かは問わない)を有する患者30例であった。
Response Assessment in Neuro-Oncology Brain Metastases(RANO-BM)の基準に準拠すると、データカットオフ日の時点で、確定された頭蓋内客観的奏効が47%(95%CI:30~64)で達成された。
脳への放射線療法を受けていない23例のうち57%(95%CI:37~74)と、1次治療としてゾンゲルチニブの投与を受けた8例のうち4例の50%(22~79)で、頭蓋内客観的奏効が得られた。
頭蓋内奏効期間中央値は6.9ヵ月(95%CI:2.9~NE)、頭蓋内PFS中央値は8.2ヵ月(4.1~11.3)であった。
コホート4の安全性プロファイルは、試験全体と一致していた。治療関連有害事象は28例(93%)にみられ、このうちGrade3以上は5例(17%)であった。Grade4の治療関連有害事象(ALT値上昇)を1例に認め、Grade5の治療関連有害事象(死亡)の報告はなかった。
著者は、「この経口標的治療薬は、進行性の疾患において、化学療法に代わる有効な1次治療の選択肢となる可能性がある」としている。
また、「脳放射線照射を受けていない活動性脳転移で頭蓋内奏効を示したことは、ゾンゲルチニブの頭蓋内活性を強調する知見といえる」「HER2に基づく治療法が1次治療の領域へと移行するに従って、治療の適切な順序、併用薬、耐性に関する重要な課題が、その重要性をさらに高めている」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)