気温変化や緯度勾配といった潜在的な環境要因が精神疾患に及ぼす影響は、これまで十分に研究されていなかった。キプロス大学のSofia Philippou氏らは、地理的緯度と気温が精神疾患の罹患率にどのように関連しているかを調査するため、本プロジェクトを実施した。Brain and Behavior誌2025年10月号の報告。
201ヵ国を対象に、年間平均気温と7つの主要な精神疾患(うつ病、気分変調症、双極症、不安症、摂食障害、自閉スペクトラム症、統合失調症)の年齢調整罹患率(有病率)を分析し、線形回帰分析を実施した。また、これらの相関データがすでに発表されている原著論文によって裏付けられているかどうかを検証するため、系統的レビューも実施した。
主な結果は以下のとおり。
・線形回帰分析では、摂食障害、自閉スペクトラム症、統合失調症の3つの精神疾患において、年間平均気温と年齢調整罹患率の間に有意な相関関係が認められた(p<0.0001)。
・系統的レビュー分析では、自閉スペクトラム症と統合失調症の罹患率は地理的要因および気候要因の影響を受ける可能性が示唆された。
・しかし、摂食障害に関する今回の知見を裏付ける既発表データは確認されなかった。
著者らは「これらの知見は、精神疾患における環境要因、遺伝的要因、社会経済的要因間の複雑な相互作用を浮き彫りにしている。精神疾患の発症機序に関与するいまだに明らかとなっていない疫学的要因を解明するためには、気温と精神疾患の罹患率との関連性について、さらなる研究が必要とされる」とまとめている。
(鷹野 敦夫)