IPFに対するnerandomilast、第III相試験のアップデート解析(FIBRONEER-IPF)/ERS2025

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2025/10/07

 

 ホスホジエステラーゼ4B(PDE4B)阻害薬nerandomilastは、特発性肺線維症(IPF)患者を対象とした国際共同第III相試験「FIBRONEER-IPF試験」1)、進行性肺線維症(PPF)患者を対象とした「FIBRONEER-ILD試験」2)において、主要評価項目の努力肺活量(FVC)の低下を有意に抑制したことが報告されている。欧州呼吸器学会(ERS Congress 2025)において、FIBRONEER-IPF試験のデータ最終固定時の解析結果をJustin M. Oldham氏(米国・ミシガン大学)が報告した。本解析において、FVCの低下抑制効果は76週時まで維持された。また、主要な副次評価項目に有意差はみられなかったものの、nerandomilast高用量群では死亡リスクの数値的な低下がみられた。

【FIBRONEER-IPF試験】
・試験デザイン:国際共同第III相無作為化プラセボ対照試験
・対象:%FVC(FVCの予測値に対する実測値の割合)が45%以上で、%DLco(一酸化炭素肺拡散能の予測値に対する実測値の割合)が25%以上の40歳以上のIPF(12ヵ月以内のHRCTに基づく診断を受け、UIP[通常型間質性肺炎]またはprobable UIPパターンを有する)患者1,177例
試験群1(低用量群):nerandomilast低用量(9mg、1日2回) 392例
試験群2(高用量群):nerandomilast高用量(18mg、1日2回) 392例
対照群(プラセボ群):プラセボ 393例
・評価項目
[主要評価項目]52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量
[主要な副次評価項目]初回急性増悪、呼吸器疾患による入院、死亡のいずれかの発生

 本発表では、76週時までのFVCの絶対変化量、データの最終固定時までのイベント発生に関する解析結果が示された。主な結果は以下のとおり。

・既報のとおり、主要評価項目の52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量は、プラセボ群が-183.5mLであったのに対し、低用量群が-138.6mL、高用量群が-114.7mLであり、いずれもプラセボ群と比較して有意にFVCの低下を抑制した(それぞれp=0.02、p<0.001)1)
・76週時においても、プラセボ群と比較して低用量群および高用量群のFVCのベースラインからの低下は抑制され、52週時よりもプラセボ群との差は大きい傾向にあった。
・データ最終固定時(平均投与期間14.8ヵ月、平均追跡期間16.4ヵ月)において、主要な副次評価項目のイベントは286例に発生し、104例が死亡した。
・主要な副次評価項目については、低用量群および高用量群のいずれも、プラセボ群に対する差はみられなかった(それぞれハザード比[HR]:0.92、0.99)。
・%FVCが10%超低下または死亡のリスクは、高用量群で低下する傾向がみられた(HR:0.75、95%信頼区間[CI]:0.59~0.95)。
・死亡のリスクは、高用量群で数値的な低下がみられた(HR:0.66、95%CI:0.41~1.08)。
・死亡のリスクを抗線維化薬の併用薬別にみると、高用量群のうち抗線維化薬の併用がない集団で低下する傾向がみられ、ニンテダニブを併用する集団でも数値的な低下がみられた。HR(95%CI)は以下のとおり。
<低用量群>
 併用なし:0.56(0.21~1.49)
 ニンテダニブ併用:1.02(0.51~2.04)
 ピルフェニドン併用:1.23(0.58~2.59)
<高用量群>
 併用なし:0.26(0.07~0.91)
 ニンテダニブ併用:0.64(0.30~1.37)
 ピルフェニドン併用:1.12(0.51~2.47)
・nerandomilast投与群で最も多く発現した有害事象は下痢であった(プラセボ群18.3%、低用量群32.1%、高用量群42.3%)。下痢は、とくにニンテダニブを併用する集団で多かった(それぞれ31.2%、50.5%、62.4%)。投与中止に至った有害事象は、それぞれ13.0%、13.5%、16.1%に発現した。ニンテダニブを併用する集団では、nerandomilast投与群の投与中止に至った有害事象が多かった(それぞれ13.9%、18.5%、23.0%)。

 本結果について、Oldham氏は「nerandomilastを単剤または既承認の薬剤との併用において、IPF治療に用いることを支持するものである」とまとめた。

 なお、FIBRONEER-IPF試験とFIBRONEER-ILD試験の統合解析の結果が、ポスター発表で示された。統合解析において、抗線維化薬の併用なしの集団では、低用量群(HR:0.55、95%CI:0.34~0.88)および高用量群(同:0.41、0.24~0.70)で死亡リスクが低下する傾向がみられた。また、ニンテダニブを併用する集団でも、高用量群で死亡リスクが低下する傾向が示された(同:0.59、0.37~0.94)。

(ケアネット 佐藤 亮)