ホスホジエステラーゼ4B(PDE4B)阻害薬nerandomilastについて、国際共同第III相試験が2試験実施されている。特発性肺線維症(IPF)患者を対象とした「FIBRONEER-IPF試験」1)、進行性肺線維症(PPF)患者を対象とした「FIBRONEER-ILD試験」2)の結果が米国胸部学会国際会議(ATS2025 International Conference)で発表され、それぞれ2025年5月18、19日にNEJM誌へ同時掲載された。両試験において、nerandomilastは努力肺活量(FVC)の低下を有意に抑制した。
【FIBRONEER-IPF試験】
・試験デザイン:国際共同第III相無作為化プラセボ対照試験
・対象:%FVC(FVCの予測値に対する実測値の割合)が45%以上で、%DLco(一酸化炭素肺拡散能の予測値に対する実測値の割合)が25%以上の40歳以上のIPF(12ヵ月以内のHRCTに基づく診断を受け、UIP[通常型間質性肺炎]またはprobable UIPパターンを有する)患者1,177例
試験群1(低用量群):nerandomilast低用量(9mg、1日2回) 392例
試験群2(高用量群):nerandomilast高用量(18mg、1日2回) 392例
対照群(プラセボ群):プラセボ 393例
・評価項目
[主要評価項目]52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量
[主要な副次評価項目]初回急性増悪、呼吸器疾患による入院、死亡のいずれかの発生
主な結果は以下のとおり。
・対象患者の平均年齢は70.2歳、%FVC平均値は78.2%、%DLco平均値は50.9%であった。
・抗線維化薬の併用状況は、ニンテダニブが45.5%、ピルフェニドンが32.3%、併用なしが22.3%であった。
・抗線維化薬の併用ありの集団は、併用なしの集団と比べて、IPF診断から試験組み入れまでの期間が長い(3.7年vs.2.8年)、%FVCが低い(77.1% vs.82.2%)、%DLcoが低い(49.6% vs.55.2%)、酸素補給の実施割合が高い(22.5% vs.16.0%)傾向にあった。
・主要評価項目の52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量は、プラセボ群が-183.5mLであったのに対し、低用量群が-138.6mL、高用量群が-114.7mLであり、いずれもプラセボ群と比較して有意にFVCの低下を抑制した(それぞれp=0.02、p<0.001)。nerandomilast投与群では、治療開始早期からFVCの低下が抑制され、76週時まで良好な傾向にあった。
・抗線維化薬の併用の有無別にみると、抗線維化薬の併用なしの集団では、52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量は、プラセボ群が-148.7mLであったのに対し、低用量群が-70.4mL、高用量群が-79.2mLであり、FVCの低下が抑制される傾向にあった。
・ニンテダニブを併用する集団では、プラセボ群が-191.6mLであったのに対し、低用量群が-130.7mL、高用量群が-118.5mLであり、FVCの低下が抑制される傾向にあった。
・ピルフェニドンを併用する集団では、プラセボ群が-197.0mLであったのに対し、低用量群が-201.8mL、高用量群が-133.7mLであり、低用量群ではFVCの低下抑制はみられなかった。この要因として、ピルフェニドンを併用する集団ではnerandimilastの血漿中濃度が低く、薬物相互作用が考えられた。
・主要な副次評価項目については、低用量群、高用量群のいずれもプラセボ群と比較して有意な改善はみられなかった。ただし、高用量群で全死亡が減少する傾向がみられた。
・nerandimilast投与群で最も多く発現した有害事象は下痢であった(プラセボ群16.0%、低用量群31.1%、高用量群41.3%)。下痢は、とくにニンテダニブを併用する集団で多く(それぞれ26.6%、49.5%、61.8%)、下痢による投与中止は33例にみられたが、そのうち29例がニンテダニブを併用する集団であった。
【FIBRONEER-ILD試験】
・試験デザイン:国際共同第III相無作為化プラセボ対照試験
・対象:%FVCが45%以上で、%DLcoが25%以上の18歳以上のPPF(12ヵ月以内のHRCTに基づき10%以上の線維化が認められたIPF以外の間質性肺疾患[ILD])患者1,176例
試験群1(低用量群):nerandomilast低用量(9mg、1日2回) 393例
試験群2(高用量群):nerandomilast高用量(18mg、1日2回) 391例
対照群(プラセボ群):プラセボ 392例
・評価項目
[主要評価項目]52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量
[主要な副次評価項目]初回急性増悪、呼吸器疾患による入院、死亡のいずれかの発生
主な結果は以下のとおり。
・対象患者の平均年齢は66.4歳、%FVC平均値は70.1%、%DLco平均値は49.3%であった。UIPパターンまたはUIP-likeパターンを有する割合は71.4%であった。
・抗線維化薬の併用状況は、ニンテダニブが43.7%であった。
・PPFの分類は、自己免疫性ILDが27.6%、線維性過敏性肺炎が19.8%、分類不能型特発性間質性肺炎が19.6%、特発性非特異性間質性肺炎が19.4%、その他が13.5%であった。
・主要評価項目の52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量は、プラセボ群が-165.8mLであったのに対し、低用量群が-84.6mL、高用量群が-98.6mLであり、いずれもプラセボ群と比較して有意にFVCの低下を抑制した(いずれもp<0.001)。nerandomilast投与群では、治療開始早期からFVCの低下が抑制され、52週時まで良好な傾向にあった。
・抗線維化薬の併用の有無別にみると、抗線維化薬の併用なしの集団では、52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量は、プラセボ群が-154.1mLであったのに対し、低用量群が-82.3mL、高用量群が-95.2mLであり、FVCの低下が抑制される傾向にあった。
・ニンテダニブを併用する集団では、プラセボ群が-180.9mLであったのに対し、低用量群が-87.8mL、高用量群が-102.9mLであり、FVCの低下が抑制される傾向にあった。
・初回データベースロック時点において、主要な副次評価項目のイベント発生割合は、プラセボ群31.1%、低用量群28.0%、高用量群24.3%であり、低用量群(ハザード比:0.88、95%信頼区間:0.68~1.14)、高用量群(同:0.77、0.59~1.01)のいずれもプラセボ群と比較して数値的な改善傾向はみられたが、統計学的有意差はみられなかった。全死亡は低用量群(同:0.60、0.38~0.95)、高用量群(同:0.48、0.30~0.79)のいずれも減少する傾向がみられた。
・nerandimilast投与群で最も多く発現した有害事象は下痢であり、とくにニンテダニブを併用する集団で多かった(プラセボ群36.5%、低用量群48.0%、高用量群49.1%)。
(ケアネット 佐藤 亮)