認知症の男性患者は、年齢や人種/民族、社会経済要因、併存疾患などで調整した後でも女性患者と比較して死亡率が高く、入院などの医療サービスの利用率も高いことを、米国・Duke University School of MedicineのJay B. Lusk氏らが明らかにした。JAMA Neurology誌オンライン版2025年8月11日号掲載の報告。
認知症の発症率は女性で高いことが知られており、性差は認知症のアウトカムにも影響する可能性が示唆されている。そこで研究グループは、認知症の男性患者と女性患者における、認知症と診断された後の死亡率や医療サービスの利用率を調査するために全国コホート研究を行った。
調査はメディケア加入データを用いて2014~21年に実施され、最大8年間の追跡調査が行われた。解析は2024年4月〜2025年4月に行われた。対象は、国際疾病分類第10版(ICD-10)に基づく認知症の診断コードを有し、過去1年以上の出来高払い制メディケア加入歴のある65歳以上の患者であった。
主要評価項目は、Cox比例ハザード回帰分析で推定された全死亡率のハザード比(HR)であった。副次評価項目は、一般的な医療サービスの利用(入院、専門看護施設やホスピス入所、神経画像診断サービスや理学療法/作業療法など)のHRであった。
主な結果は以下のとおり。
・研究には、2014~21年に認知症と診断された572万1,711例(女性330万2,579例、男性241万9,132例)が含まれた。
・女性患者は、男性患者と比較して1年粗死亡率および全原因入院率が低かった(いずれもp<0.001)。
-1年粗死亡率:女性21.8%、男性27.2%
-全原因入院率:女性46.9%、男性50.5%
・男性に関連する死亡の未調整HRは1.30(95%信頼区間[CI]:1.29~1.31、p<0.001)であった。
・年齢、人種、民族、メディケイドの二重受給資格、併存疾患、医療アクセスで調整すると、この関連性はわずかに弱まった(調整HR:1.24、95%CI:1.23~1.26、p<0.001)。
・男性に関連する全原因入院の未調整HRは1.13(95%CI:1.12~1.14、p<0.001)、調整HRは1.08(95%CI:1.08~1.09、p<0.001)であった。
・男性患者では、ホスピス入所、神経画像検査、神経変性疾患の診断または行動障害による入院のリスクも高かった。
これらの結果より、研究グループは「認知症の男性患者の死亡率を低下させ、医療サービスの利用を減らす戦略は、認知症による負担を軽減するうえでとくに効果的である可能性がある。女性は認知症の発症率が高いため、発症予防に重点を置くことが性差による認知症関連死亡率の格差を解消するために重要である」とまとめた。
(ケアネット 森)