亜鉛、銅、セレンなどの微量元素は、ミトコンドリア機能へ影響を及ぼすこともあり、亜鉛不足が心不全の予後に関連するなど単一元素の不足については報告されている。しかし、微量元素の複合的な影響については十分に解明されていない。今回、名古屋大学のNagai Shin氏らは、急性心不全患者における微量元素の異常と臨床転帰への関連について明らかにし、微量元素異常の是正が心不全管理における新たな目標となる可能性を示唆した。Journal of Cardiology誌2025年7月25日号掲載の報告。
研究者らは、急性心不全患者におけるさまざまな微量元素の単独および複合的な検査値異常や臨床転帰との関連を評価した。対象は、2012年1月~2024年5月に名古屋大学病院に入院した18歳以上の急性心不全患者で、亜鉛、銅、セレンの濃度を測定した。各微量元素の測定基準を亜鉛欠乏60µg/dL未満、銅過剰132µg/dL超、セレン欠乏10ng/dL未満とし、主要評価項目は入院測定後1年間の全死亡とした。副次評価項目として全死亡または心不全再入院、心不全再入院のみを評価した。
主な結果は以下のとおり。
・147例(年齢中央値76歳、女性39%)のうち、39%に亜鉛欠乏、52%に銅過剰、61%にセレン欠乏が認められた。
・対象者の84%で1つ以上の微量元素異常が認められ、51%で2つまたは3つの異常が認められた。
・複数の異常を認めた患者は、そうではない患者と比較して、Alb低値(3.2g/dL vs.3.7g/dL)、CPR高値(1.3mg/dL vs.0.3mg/dL)、Hb低値(11.3g/dL vs.12.6g/dL)であった。
・追跡期間中央値196日において全死亡18件を認め、複数の異常を認めた患者では全死亡リスクが有意に高かった(調整ハザード比:3.78、95%信頼区間:1.23~11.6)。
(ケアネット 土井 舞子)