IgA腎症の治療において、atacicept(B細胞活性化因子[BAFF]と増殖誘導リガンド[APRIL]の二重阻害薬、ヒトTACI-Fc融合タンパク質)はプラセボと比較して、36週の時点で蛋白尿の有意な減少をもたらし、有害事象のほとんどは軽度~中等度であったことが、米国・スタンフォード大学のRichard Lafayette氏らORIGIN Phase 3 Trial Investigatorsによる第III相の二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験「ORIGIN 3試験」の中間解析で報告された。本研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年11月6日号で発表された。
31ヵ国の無作為化プラセボ対照比較試験
ORIGIN 3試験は、IgA腎症の治療におけるataciceptの安全性と有効性の評価を目的とし、日本を含む31ヵ国の157施設で実施した(Vera Therapeuticsの助成を受けた)。今回は、事前に規定した36週時の中間解析の結果が報告された。
試験の対象は年齢18歳以上、生検で確定したIgA腎症で、24時間尿中タンパク質/クレアチニン比≧1.0(タンパク質とクレアチニンはグラム[g]単位で測定)、蛋白尿(1日当たり1.0g以上の尿中タンパク質排泄量)、推定糸球体濾過量(eGFR)≧30mL/分/1.73m
2の患者であった。
これらの参加者を、atacicept群(150mg、週1回、患者自身が自宅で皮下投与)またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。
主要エンドポイントは、36週時点の24時間尿中タンパク質/クレアチニン比のベースラインからの変化率とした。
Gd-IgA1値の減少、血尿の消失も優れる
203例を有効性の中間解析に組み入れた。atacicept群が106例(平均年齢40.1歳、男性54%、平均尿中タンパク質/クレアチニン比1.7、平均eGFR値65.3mL/分/1.73m
2、平均尿中タンパク質排泄量2.2g/日)、プラセボ群が97例(40.9歳、60%、1.8、64.9mL/分/1.73m
2、2.3g/日)だった。202例(99.5%)が最大承認用量または最大耐用安定用量のレニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬、108例(53.2%)が安定用量のナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬の投与を受けていた。
36週時の24時間尿中タンパク質/クレアチニン比のベースラインからの変化率は、プラセボ群が-6.8%であったのに対し、atacicept群は-45.7%と、蛋白尿の有意な減少を示した(減少の幾何平均群間差:41.8%ポイント、95%信頼区間[CI]:28.9~52.3、p<0.001)。蛋白尿は、atacicept群では12週目という早い段階で減少が確認され、明らかな改善効果が36週目まで持続した。
ガラクトース欠損型IgA1(Gd-IgA1)の値は、早い場合はatacicept群の患者で4週目には減少しており、36週目までの変化率は同群が-68.3%、プラセボ群は-2.9%であった(減少の幾何平均群間差:67.4%ポイント、95%CI:63.8~70.6)。
また、ベースラインで血尿を認めた122例(60.1%)のうち、36週目までにatacicept群の81.0%(51/63例)、プラセボ群の20.7%(12/58例)で血尿が消失した(オッズ比:19.1、95%CI:7.3~50.0)。
注射部位反応、上気道感染症が多い
安全性の解析には、試験薬の投与を少なくとも1回受けた428例(各群214例)を含めた。有害事象は、atacicept群で127例(59.3%)、プラセボ群で107例(50.0%)に発現した。各群214例のうち、軽度が90例(42.1%)および74例(34.6%)、中等度が34例(15.9%)および24例(11.2%)と、軽度~中等度がほとんどを占めた。重篤な有害事象は、それぞれ1例(0.5%、胆嚢炎[試験薬との関連はない])および11例(5.1%)にみられた。
いずれかの群で5%以上に発生した有害事象は、注射部位反応(atacicept群19.2%、プラセボ群1.9%)、上気道感染症(12.1%、8.9%)、上咽頭炎(7.9%、6.1%)、注射部位紅斑(5.6%、0.5%)であった。
著者は、「これらの知見は、同様の患者集団を対象とし、同一の投与量と投与スケジュールを用いた第IIb相試験と一貫性があることから、ataciceptによるBAFFとAPRILの二重阻害は、IgA腎症の基盤となる病態生理を標的としており、それによって疾患経過を修飾する可能性が示唆される」としている。
(医学ライター 菅野 守)