男性乳がんと女性乳がんの予後を比較した研究の結果は一貫しておらず、わが国において男性乳がんと女性乳がんの予後を大規模集団で比較した研究はほとんどない。今回、愛知県がんセンターのDaisy Sibale Mojoo氏らが12府県のがん登録データを用いて検討した結果、男女の乳がんの純生存率が同程度であることが示された。Cancer Science誌オンライン版2025年3月3日号に掲載。
本研究では、宮城県、山形県、栃木県、新潟県、福井県、愛知県、滋賀県、大阪府、鳥取県、山口県、長崎県、熊本県において1993~2011年に診断された乳がん18万1,540例(うち男性1,058例、0.6%)を解析した。5年および10年の純生存率(net survival:がん以外の死亡がなかったと仮定した場合の生存率)を推定し、性別、期間(1993〜97年、1998〜2002年、2003〜06年、2007〜11年)、年齢(50歳未満、50〜69歳、70〜99歳)、病期、組織型で層別化した。過剰ハザード比(EHR)は、期間、年齢、病期、組織型で調整した。これらの因子間の異質性の評価にはコクランのQ検定を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・男性乳がん全体の5年および10年純生存率推定値はそれぞれ90.7%(95%信頼区間[CI]:86.3~93.7)および83.7%(同:72.2~90.8)、女性乳がん全体ではそれぞれ88.3%(同:88.1~88.5)および79.1%(同:78.7~79.4)であった。
・男性乳がんの生存は女性乳がんと同程度であり、EHRは5年生存で0.88(95%CI:0.70~1.09)、10年生存で0.86(同:0.69~1.07)であった。
・異質性の分析では、これらの層において生存率に有意な性差は認められなかった。
(ケアネット 金沢 浩子)