高齢乳がん患者へのアベマシクリブ、リアルワールドでの治療実態/日本臨床腫瘍学会

提供元:ケアネット

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公開日:2025/03/21

 

 日本においてアベマシクリブによる治療を受けた、転移を有するHR+/HER2-乳がん患者の全体集団および高齢者集団(65歳以上)の患者特性、治療パターン、転帰をレトロスペクティブに解析した結果、両集団の治療開始から中止までの期間(TTD)や減量が必要となった割合は同等であり、高齢者でも適切な用量であればアベマシクリブによる治療は実施可能であることを、国立がん研究センター中央病院の下井 辰徳氏が第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で発表した。

 本調査では、メディカル・データ・ビジョンのデータベースの非識別化データを解析した。2018年11月~2023年5月に最初のCDK4/6阻害薬としてアベマシクリブ(+内分泌療法)を投与された転移を有するHR+/HER2-乳がん患者を同定した。全体集団および高齢者集団のTTDなどを、カプランマイヤー法を用いて推定した。

 主な結果は以下のとおり。

●最初のCDK4/6阻害薬としてアベマシクリブを投与された転移を有するHR+/HER2-乳がん患者3,669例のうち、1,681例(45.8%)が65歳以上であった。年齢中央値は全体集団63歳(範囲:21~97)、高齢者集団72歳(65~97)であった。骨・骨髄転移があったのは60.1%および56.3%、内臓転移があったのは54.9%および55.9%であった。高齢者集団では併存疾患を有している割合が高かった。
●高齢者集団のアベマシクリブレジメンで最も多かったのはアベマシクリブ+フルベストラント(55.0%)で、アベマシクリブ+レトロゾール(31.9%)、アベマシクリブ+アナストロゾール(13.0%)と続き、全体集団と同等であった。
●初回アベマシクリブ療法のTTD中央値は全体集団と高齢者集団で類似していた(以下、括弧内は95%信頼区間)。
 ・全体集団 13.1ヵ月(12.5~14.0)
 ・高齢者集団 12.8ヵ月(11.4~13.6)
●高齢者集団のうち、75歳以上の場合はTTDが短かった。
 ・65~69歳 13.2ヵ月(11.4~15.3)
 ・70~74歳 13.2ヵ月(11.0~15.2)
 ・75歳以上 11.2ヵ月(9.8~13.0)
●内臓転移がある場合もTTDが短かった。
 ・内臓転移あり 11.5ヵ月(10.3~13.0)
 ・内臓転移なし 14.0ヵ月(12.2~15.4)
●初回アベマシクリブ療法から最後の乳がん治療のTTDは、年齢にかかわらず同等であった。
 ・全体集団 42.1ヵ月(40.5~45.7)
 ・高齢者集団 40.2ヵ月(37.0~44.0)
●化学療法開始までの期間は、高齢者集団のほうが長かった。
 ・全体集団 30.6ヵ月(28.8~33.1)
 ・高齢者集団 34.8ヵ月(30.2~39.5)
●アベマシクリブの初回投与を承認用量(300mg/日)で実施していた割合は、全体集団79.3%、高齢者集団69.6%(65~69歳79.9%、70~74歳72.9%、75歳以上56.8%)であった。治療中に1段階以上減量したのは、全体集団55.7%、高齢者集団58.3%で、初回の減量までの期間は高齢者集団で短かった。

(ケアネット 森)