統合失調症とさまざまな健康アウトカムとの関連性を評価した包括的なアンブレラレビューは、これまでになかった。韓国・慶熙大学校のHyeri Lee氏らは、統合失調症に関連する併存疾患の健康アウトカムに関する既存のメタ解析をシステマティックにレビューし、エビデンスレベルの検証を行った。Molecular Psychiatry誌オンライン版2024年10月18日号の報告。
統合失調症患者における併存疾患の健康アウトカムを調査した観察研究のメタ解析のアンブレラレビューを実施した。2023年9月5日までに公表された対象研究を、PubMed/MEDLINE、EMBASE、ClinicalKey、Google Scholarより検索した。PRISMAガイドラインに従い、AMSTAR2を用いて、データ抽出および品質評価を行った。エビデンスの信頼性は、エビデンスの質により評価および分類した。リスク因子と保護因子の分析には、等価オッズ比(eRR)を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・本アンブレラレビューには、19ヵ国、6,600万人超の参加者を対象とし、21の併存疾患の健康アウトカムを評価した88件の原著論文を含む9件のメタ解析を分析に含めた。
・統合失調症患者は、以下の健康アウトカムとの有意な関連が認められた。
【喘息】eRR:1.71、95%信頼区間[CI]:1.05〜2.78、エビデンスのクラスおよび質(CE):有意でない
【慢性閉塞性肺疾患】eRR:1.73、95%CI:1.25〜2.37、CE:弱い
【肺炎】eRR:2.63、95%CI:1.11〜6.23、CE:弱い
【女性患者の乳がん】eRR:1.31、95%CI:1.04〜1.65、CE:弱い
【心血管疾患】eRR:1.53、95%CI:1.12〜2.11、CE:弱い
【脳卒中】eRR:1.71、95%CI:1.30〜2.25、CE:弱い
【うっ血性心不全】eRR:1.81、95%CI:1.21〜2.69、CE:弱い
【性機能障害】eRR:2.30、95%CI:1.75〜3.04、CE:弱い
【骨折】eRR:1.63、95%CI:1.10〜2.40、CE:弱い
【認知症】eRR:2.29、95%CI:1.19〜4.39、CE:弱い
【乾癬】eRR:1.83、95%CI:1.18〜2.83、CE:弱い
著者らは「統合失調症患者は、呼吸器、心血管、性機能、神経、皮膚に関する健康アウトカムに対する広範な影響が認められており、統合的な治療アプローチの必要性が明らかとなった。主に、有意ではなく、エビデンスレベルが弱いことを考えると、本知見を強化するためにも、さらなる研究が求められる」としている。
(鷹野 敦夫)