急性期統合失調症に対する長時間作用型注射剤抗精神病薬~メタ解析

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2023/08/03

 

 長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬は、統合失調症の再発予防効果が期待できるが、急性期患者においてもベネフィットをもたらす可能性がある。ドイツ・ミュンヘン工科大学のDongfang Wang氏らは、急性期統合失調症患者に対する第2世代抗精神病薬(SGA)のLAIに関するエビデンスのシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、急性期統合失調症に対し、SGA-LAIは効果的な治療選択肢であることを報告した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2023年6月23日号の報告。

 急性期統合失調症を対象にSGA-LAI(オランザピン、リスペリドン、パリペリドン、アリピプラゾール)とプラセボまたは経口抗精神病薬を比較したランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビュー、およびメタ解析を実施した。統合失調症の精神症状を主要アウトカムとし、有効性および忍容性の23項目のアウトカムを分析した。ランダム効果、ペアワイズメタ解析、サブグループ解析を行った。研究の質の評価には、Cochrane-Risk-of-Bias-Tool ver.1を用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・分析には、66の研究、1万6,457例を含めた。
・内訳は、SGA-LAIとプラセボを比較した研究は11件、SGA経口抗精神病薬とプラセボを比較した研究は54件、SGA-LAI(アリピプラゾール)と経口抗精神病薬を比較した研究が1件であった。
・4種類のSGA-LAIは、プラセボと比較し、全体的な症状改善効果が認められた。
 【オランザピン】標準化平均差(SMD):-0.66(95%信頼区間[CI]:-0.90~
-0.43)
 【アリピプラゾール】SMD:-0.64(95%CI:-0.80~-0.48)
 【リスペリドン】SMD:-0.62(95%CI:-0.76~-0.48)
 【パリペリドン】SMD:-0.42(95%CI:-0.53~-0.31)
・SGA-LAIの副作用プロファイルは、経口剤で確認されている既知の副作用と同様であった。
・プラセボと比較したサブグループ解析では、一部の副作用における経口剤とLAIとの顕著な違いは認められなかった。
・LAIでは、一部の副作用が経口剤よりも低い可能性があるものの、間接的な比較であるため、今後の直接比較によるRCTが求められる。

(鷹野 敦夫)