統合失調症の入院リスクと日照時間の関連性に対する建築環境の影響

提供元:ケアネット

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公開日:2023/03/23

 

 統合失調症と日照時間との関係を検討した研究では、関連性を明らかにすることができていない。要因の1つとして、統合失調症患者の日照時間に対する建築環境の影響が考えられる。中国・安徽医科大学のLi Liu氏らは、統合失調症と日照時間の関連性に対する建築環境の影響について調査を行った。その結果、さまざまな建築環境において、日照時間は統合失調症による入院リスクに影響を及ぼすことが明らかとなった。著者らは、「本結果は、特定の地域居住で脆弱性を有する患者の識別に役立ち、医療資源の合理的な割り当てや悪影響の適時な回避によって、統合失調症発症リスク低減のための助言を政策立案者が提供することを示唆するものである」と述べている。The Science of the Total Environment誌オンライン版2023年2月8日号の報告。

 中国・合肥市の主要都市部において、2017~20年の毎日の統合失調症入院データおよび、それに対応する気象要因や環境汚染に関するデータを収集した。都市部における統合失調症入院期間での日照時間の影響を評価するため、分布ラグ非線形モデルと組み合わせた一般化加法モデルを用いた。さらに、建築物の密度や高さ、正規化植生指数、夜間の光が、統合失調症と日照時間の関連性に及ぼすさまざまな影響も調査した。

 主な結果は以下のとおり。

・不十分な日照時間(5.3時間未満)は、統合失調症による入院リスク増加と関連しており、最大相対リスクは、2.9時間での1.382(95%信頼区間:1.069~1.786)であった。
・適切な日照時間は、統合失調症による入院リスク低下と関連が認められた。
・サブグループ解析では、女性と高齢者において、とくに脆弱性が認められた。
・日照時間が不十分な場合、建築物の密度が高く夜間の光が多いほど、統合失調症リスクに有意な好影響が認められた。
・正規化植生指数が高いほど、また、建築物の高さが高いほど、統合失調症のリスク低下と関連が認められた。

(鷹野 敦夫)