一般集団よりも2型DM患者でとくに死亡率が高いがん種は?

提供元:ケアネット

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公開日:2023/02/03

 

 2型糖尿病の高齢患者のがん死亡率を長期的に調査したところ、全死因死亡率の低下とは対照的にがん死亡率は上昇し、とくに大腸がん、肝臓がん、膵臓がん、子宮内膜がんのリスクが増加していたことを、英国・レスター大学のSuping Ling氏らが明らかにした。Diabetologia誌オンライン版2023年1月24日掲載の報告。

 これまで、年齢や性別などの人口統計学的要因が2型糖尿病患者の心血管アウトカムに与える影響は広く研究されているが、がん死亡率への影響については不十分であった。そこで研究グループは、人口統計学的要因や肥満や喫煙などのリスク因子が2型糖尿病患者のがん死亡率に与える長期的な傾向を明らかにするため、約20年間のデータを用いて調査を行った。

 対象は、1998年1月1日~2018年11月30日に2型糖尿病と新規で診断され、英国の診療データベース「Clinical Practice Research Datalink」に登録された35歳以上の13万7,804例であった(年齢中央値63.8歳、女性44.6%、白人83.0%、非喫煙者46.9%、正常体重者11.7%、BMI中央値30.6kg/m2)。年齢、性別、人種、貧困状態(複数の剥奪指標ランク)、BMI、喫煙の有無で調整し、全死因、全がん、がん部位別の死亡率を一般集団と比較した。

 主な結果は以下のとおり。

・2型糖尿病患者119万4,444人年(中央値8.4年[四分位範囲:5.0~12.2年])の追跡で、3万9,212例(28.5%)が死亡した。
・全死因死亡率は、1998年~2018年にすべての年齢(55歳、65歳、75歳、85歳)で減少した。
・全がん死亡率は55歳と65歳で減少したが、75歳と85歳で増加した。また、白人、現在/過去の喫煙者で増加したが、他の人種や非喫煙者では減少傾向にあった。
・全がん死亡率の平均年間変化率(AAPC)は、55歳で-1.4%(95%信頼区間[CI]:-1.5%~-1.3%)、65歳で-0.2%(-0.3%~-0.1%)、75歳で+1.2%(+0.8%~+1.6%)、85歳で+1.6%(+1.5%~+1.7%)であった。また、AAPCが高かったのは、女性+1.5%(男性+0.5%)、最貧困層+1.5%(最富裕層+1.0%)、重度肥満者+5.8%(普通体重者+0.7%)であった。
・一般集団と比較した2型糖尿病患者の標準化死亡比(SMR)は、全死因1.08(95%CI:1.07~1.09)、全がん1.18(1.16~1.20)、大腸がん2.40(2.26~2.54)、肝臓がん2.13(1.94~2.33)、膵臓がん2.12(1.99~2.25)、子宮内膜がん(女性のみ)2.08(1.76~2.44)、胆嚢がん1.36(0.99~1.83)、乳がん(女性のみ)1.09(1.01~1.18)、肺がん1.04(1.00~1.08)であった。

 研究グループは、上記の結果から「2型糖尿病の高齢患者では、全死因死亡率の低下とは対照的にがん死亡率は上昇し、とくに大腸がん、肝臓がん、膵臓がん、子宮内膜がんが増加していた。高齢者、貧困層、喫煙者における個別のがん予防と早期発見のための戦略が必要である」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)