認知症患者の死亡率に対するコリンエステラーゼ阻害薬の影響~システマティックレビュー

提供元:ケアネット

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公開日:2022/10/11

 

 コリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)は、神経活動だけでなく心血管系への作用も有していることから、死亡率に影響を及ぼす可能性がある。フランス・ソルボンヌ大学のCeline Truong氏らは、ChEIによる治療が認知症患者の死亡率を改善するかを検討した。その結果、認知症患者に対するChEIの長期治療とすべての原因による死亡リスク低下との関連が認められ、そのエビデンスの質は中~高であることが示唆された。著者らは、これらの調査結果は、認知症患者に対するChEI治療の決定に影響を与える可能性があるとしている。Neurology誌オンライン版2022年9月12日号の報告。

 2021年11月までに公表された文献をPubMed、EMBASE、Cochrane CENTRAL、ClinicalTrials.gov、ICRTPより検索し、レビュー、ガイドライン、これらに含まれる研究の参考文献をスクリーニングした。あらゆるタイプの認知症患者を対象に、ChEIによる治療とプラセボまたは通常治療との比較を6ヵ月以上実施した、バイアスリスクのより低いランダム化比較試験(RCT)および非RCTを分析に含めた。2人の独立した研究者により、研究の包含およびバイアスリスクを評価し、事前に規定されたフォーマットに従いデータを抽出した。研究者間の不一致事項については、ディスカッションおよびコンセンサスにより解決した。すべての原因による死亡および心血管死に関するデータは、粗死亡率または多変量調整ハザード比(HR)として測定し、ランダム効果モデルを用いてプールした。集積されたデータは、逐次解析(trial sequential analysis:TSA)を用いて評価した。なお、本研究はPRISMAガイドラインに従って実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・選択基準を満たした研究は、24件(7万9,153例)であった(RCT:12件、コホート研究:12件、平均フォローアップ期間:6~120ヵ月、アルツハイマー型認知症:13件、パーキンソン病認知症:1件、血管性認知症:1件、あらゆるタイプの認知症:9件)。
・対照患者のプールされたすべての原因による死亡リスクは、100人年当たり15.1人であった。
・ChEIによる治療は、すべての原因による死亡リスクの低下と関連が認められた(未調整RR:0.74[95%CI:0.66~0.84]、調整済みHR:0.77[95%信頼区間[CI]:0.70~0.84]、エビデンスの質:中~高)。
・本結果は、いくつかの感度分析によりRCT、非RCTにおいて一貫性が認められた。
・認知症のタイプ、年齢、各薬剤、認知症の重症度によるサブグループにおいても、差は認められなかった。
・心血管死についてのデータは少なかったが(RCT:3件、コホート研究:2件、9,182例、エビデンスの質:低~中)、ChEIで治療された患者でリスクは低かった(未調整RR:0.61[95%CI:0.40~0.93]、調整済みHR:0.47[95%CI:0.32~0.68])。
・TSAでは、すべての原因による死亡のアウトカムは確実性が高かったが、心血管死のリスクについてはそうではなかった。

(鷹野 敦夫)