BRCA1/2遺伝子の病的バリアント、新たに3がん種との関連が明らかに/JAMA Oncol

提供元:ケアネット

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公開日:2022/04/28

 

 BRCA1/2遺伝子の病的バリアントは、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、膵がんの発症リスク上昇に関与することが知られている。今回、日本人集団における世界最大規模のがん種横断的ゲノム解析が実施され、BRCA1/2遺伝子の病的バリアントは上記4がん種のほかに胃がん、食道がん、胆道がんの発症リスクも上昇させることが示唆された。理化学研究所生命医科学研究センターの桃沢 幸秀氏らによるJAMA Oncology誌オンライン版2022年4月14日号への報告。

病的バリアント保持率を各がん種の患者と対照者間で比較

 研究グループは、2003年4月~2018年3月にバイオバンク・ジャパンに登録されたデータを用いて、胆道がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、子宮体がん、食道がん、胃がん、肝がん、肺がん、リンパ腫、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、腎がんの14がん種における計10万3,261人(患者群6万5,108人、対照群3万8,153人)について、BRCA1/2遺伝子のゲノム解析を実施。データの解析は、2019年8月~2021年10月に行われた。

 ゲノム解析はターゲットシークエンス法を用いて、BRCA1/2遺伝子のタンパク質への翻訳に影響が大きいとされる翻訳領域およびその周辺2塩基の合計16,111塩基の配列を調査。病的バリアントと各がん種との関連は、各がん種の患者と対照者との間の病的バリアント保持率を比較することで評価した。

 BRCA1/2遺伝子の病的バリアントと各がん種との関連を評価した主な結果は以下のとおり。

・平均年齢は患者群(診断時)が64.1歳、対照群(登録時)が61.8歳。それぞれ女性が42.3%、46.9%だった。
・1,810個の遺伝的バリアントが同定され、さらに、ENIGMAコンソーシアムの手法を用いて、これらの遺伝的バリアントから315個の病的バリアントが同定された。
・オッズ比(OR)>4.0(本研究における統計学的基準:p<1×10-4)を満たしたのは、BRCA1遺伝子については、すでに病的バリアントと疾患リスクとの関連が知られている女性乳がん(OR:16.1)、卵巣がん(OR:75.6)、膵がん(OR:12.6)に加えて、胃がん(OR:5.2、95%信頼区間[CI]:2.6~10.5)、胆道がん(OR:17.4、95%CI:5.8~51.9)で関連が認められた。BRCA2遺伝子については、女性乳がん(OR:10.9)、男性乳がん(OR:67.9)、卵巣がん(OR:11.3)、膵がん(OR:10.7)、前立腺がん(OR:4.0)に加えて、胃がん(OR:4.7、95%CI:3.1~7.1)、食道がん(OR:5.6、95%CI:2.9~11.0)で病的バリアントとの関連が認められた。
・なお、p<0.05の基準までみると、BRCA1遺伝子については肺がんとリンパ腫、BRCA2遺伝子については子宮頸がん、子宮体がん、肝がん、腎がんと病的バリアントとの関連が認められた。

(ケアネット 遊佐 なつみ)

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