医療機関でのブレークスルー感染事例の共通点は/感染研

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2021/12/23

 

 国立感染症研究所は、12月16日に同研究所のホームページで「ブレイクスルー感染者を含む医療機関、福祉施設などでのクラスター調査から得られた知見(簡略版)」を公開した。オミクロン株の拡大が懸念されている現在、クラスター抑止の観点からも参考にしていただきたい。

11のブレークスルー感染事例で共通した事項とは

 今回公開された知見は、2021年8月以降、医療施設や福祉施設などにおいて、ワクチン接種後一定の期間を経過した者のうち、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患する、いわゆるブレークスルー感染者を多数含むクラスターが報告されるようになったことに鑑み、「ブレークスルー感染者を多数含む複数の国内各地で発生したクラスターの各調査結果(計11事例)から得られた、共通すると思われる代表的な所見、および共通する対策に関する提案について、迅速性に重きを置いた形で簡略に紹介する」としている。

 また、基となった調査における陽性者の全検体の遺伝子情報は分析されていないが、分析されたウイルスについてはすべてデルタ株であったこと、この11事例全体を通して、2回目の接種日から発症までの週数の中央値は、職員については17.1週(範囲5.1-22.6週)、入所者・入院患者については7.3週(範囲0.1-19.6週)だったことも触れられている。

【代表的な所見】
・集団として高いワクチン接種率を達成していても、COVID-19陽性者が集団に入り込むと、濃厚な接触を必要とする介護度の高い方、マスク着用、手指衛生などが実施できないご高齢な方、またそのような方たちを介護する職員を中心に感染伝播が起こっていた。
・施設におけるブレークスルー感染者を含むクラスターの発生前、発生中にその施設周辺地域においてCOVID-19の流行が認められていた。
・ワクチン既接種者が感染した場合の症状は軽度であり、健康観察(特に37.5℃以上の発熱)が十分に行われていても検査に至らなかったケースが多く、事例の探知が遅れた。そのため、真の発端例の特定やウイルスの侵入経路については不明な場合が多かった。
・陽性者数が多くても、これまでのクラスターと比較し、収束までの期間が短縮化されていた。
・ワクチン接種以前のクラスターでは重症化していたと思われる方たち(高齢者、基礎疾患を有する方など)も比較的軽症で改善していた。ただし、経時的にブレークスルー感染事例における重症度が変動していく可能性はあり、今後も厳重に監視していく必要がある。

【共通する対策に関する提案】
・職員や患者、入所者のワクチン接種歴を把握し、未接種者に対してはワクチンの効果、安全性、副反応等を十分説明し、接種について再度働きかけていただく。
・ワクチン接種の有無にかかわらず、COVID-19の感染経路に基づいた適切な予防法、消毒法について、特に医療従事者や施設職員は正しく実践する。
・ブレークスルー感染者の症状は軽症であることが多いため、健康管理(観察と記録)の強化とともに、軽症(発熱なく上気道症状のみなど)でも申告すること、感染リスクの高い行動などを避けること、などCOVID-19予防策について今一度周知徹底していただく。
・ブレークスルー感染における重症度の推移については厳重に監視していく。

(ケアネット 稲川 進)