忙しい医師向け、スキマ時間に学べる英語学習アプリ5選【医療者のための英語学習法】

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公開日:2021/10/22

「将来は研究や臨床で留学をしたい」「国際学会で発表したい」「外国人の患者を英語で診察できるようになりたい」といった理由で、英語を勉強したいと感じている医療者の方は多いのではないでしょうか。

私は現在、ニューヨークにある病院で内科レジデントとして働いています。日本で生まれ育ち、英語はまったく話せなかったものの、20歳ごろから本格的に英語学習を始めました。その後、USMLE(米国医師国家試験)の受験と就職活動を経て29歳で渡米し、臨床医として働いています。当然ながら、職場では患者さんやその家族、同僚や上司とのコミュニケーションはすべて英語で、高い語学力を求められる日々です。

卒後5年間、私は海外で働くことを目指して、日本で働きながらコツコツ英語力を向上させてきました。その際に、とくに便利だと感じたのがスマホアプリです。数多くの英語学習の教材がある中で「なぜアプリ?」と思われるかもしれません。私が英語学習にアプリが向いていると考える理由は3点あります。

1)常に持ち歩いているのでスキマ時間に利用しやすい

皆さんも体感されていると思いますが、臨床業務には、忙しいながらふとしたスキマ時間が存在します。たとえば、外来で患者さんが来るのを待つ間、MRIの付き添いに行って検査が終わるのを待っている間、当直中に患者を診ていない時間など…。重い書籍をいつも持ち歩くのは難しいですが、スマホは常に持ち歩いているため、ちょっとしたスキマ時間を無駄にせず、勉強に充てるツールとして最適なのです。

2)テキストと音声の両方からインプットできる

学習教材が書籍の場合は、インプットはテキストのみです。一方、アプリはテキストと音声の両方があるものが多く、テキストと音声をセットで覚えることが可能です。このことは、日本人がとくに苦手とすることの多いスピーキングやリスニングの向上に役立ちます。

3)フィードバックやリマインド機能がある

アプリは、テスト形式になっているもの、テストで間違えた問題だけを繰り返し復習できる機能が付いたものが多くあり、書籍で勉強するよりも効率的です。ついついサボりがちになる勉強も、スマホのリマインド機能、通知機能をオンにしておけば毎日忘れることなく続けられます。また、学習の進捗状況が可視化されるのも良い点です。

今回は、私のように「忙しくてまとまった時間を確保できない」という方に向けて、スキマ時間や移動時間を活用して英語力を向上させることができるアプリを5つご紹介したいと思います。

1)英単語学習「mikan」

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スキマ時間に英単語を覚えられる、単語帳アプリです。アプリ自体は無料で利用でき、アプリ内で単語帳を購入して単語学習に活用します。単語の音声読み上げ機能があり、発音とセットで覚えられるのが良いところ。間違えた問題だけをもう一度やり直すことも可能です。研究留学や臨床留学を目指す場合にTOEICやTOEFLなどの資格試験を求められる場合がありますが、そういった試験対策にもぴったりです。

2)実践的な英会話が学習できる「Real英会話」

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ネイティブが実際に日常会話で使うフレーズが3,000以上載っています。どのフレーズも短文形式で紹介されているため、実際に使う場面を想像しやすいのが特徴。フレーズの自動再生機能は移動中のインプットに最適です。980円と有料のアプリですが値段以上の価値があると感じます。

英語学習では、英語のフレーズを聞いた後に自分で話す「シャドーイング」が効果的だとされています。このアプリのフレーズはシャドーイングにちょうどいい長さなので、私も活用していました。医療英語に特化しているわけではありませんが、短期留学を行う予定の方や、オンライン英会話で講師とスムーズな会話をしたい方などにお薦めです。

3)ネットで聞けるラジオアプリ「Podcast」

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ネットで配信されている音声が聞ける、いわば「ネットラジオ」として有名なPodcast。実は医療英語の学習に役立つものが数多くあります。臨床留学や海外での臨床実習を目指す方にお薦めなのが、「The Clinical Problem Solvers」というチャンネルです。研修医や医学生が症例プレゼンを行い、他の研修医や医学生がディスカッションに参加する、という形式のPodcastです。実際に米国の回診で行っているプレゼンやディスカッションに形式が近く、洗練された指導医が司会をしていることもあって臨床推論の勉強にもなります。

また「NEJM this week」「JAMA Editors' Summary」などのチャンネルでは、その週に出版された有名医学雑誌のサマリーを聞くことができるため、英語学習のみならず医学情報のアップデートにも最適です。米国や欧州の各専門科学会が中心となってPodcastチャンネルを運営していることも多いので、ぜひご自身の専門科のPodcastを見つけてみてください。英語学習と医療情報のアップデートを同時に行うことができて一石二鳥です。

4)発音矯正アプリ「ELSA Speak」

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こちらは英語の発音に自信がない方にお薦めしたい、発音矯正アプリです。これまで英語の発音を矯正するためには、英会話スクールに通ったりネイティブと話したりする必要がありました。このアプリでは、AIが発音を聞き分け、どこが合っていてどこが間違っているかを一音ずつ指摘してくれます。そのフィードバックを受けて自己学習を積み重ねていく、という画期的な仕組みとなっています。

英語は世界中の人が使うコミュニケーションの手段であり、英語になまりやアクセントがあるのは当然のこととして認識されています。そのため、日本人特有のなまりやアクセントがあっても大きな問題にはならないことが多いでしょう。しかし、「rとl」、「bとv」などを含む一部の単語では、発音が違うとまったく異なる意味になる場合が多々あります。私も、発音が理由でコミュニケーションが成り立たず、面食らう場面を幾度となく経験してきました。こうしたアプリを利用して自己学習で発音矯正ができれば、英語を話す時に自信が持てるようになります。

5)習慣化アプリ「みんチャレ」

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最後に紹介するのは、英語学習アプリではありません。同じ目標を持った人が集まり、勉強やダイエット、禁煙などにチャレンジする「三日坊主防止アプリ」です。英語学習のグループも多数あるので、「英語を勉強しようと思ってもついつい三日坊主になってしまう」という方にお薦めです。「オンライン英会話を毎日やる」「ELSA Speakを毎日やる」などの目標を決めたら、同じ目標を持つ仲間のいるグループに加入します(匿名で参加できます)。やった内容の写真やスクリーンショットをタイムラインに投稿し、他の人からのリアクションをもらえる、というシステムです。「1人でチャレンジすると挫折しやすいが、チームでお互いに励まし合うと長続きする」という科学的根拠に基づいて作られたアプリとのこと。一度試してみると面白いですよ。

以上、英語学習で使えるアプリを5つご紹介しました。最初は無料で利用できるものがほとんどなので、まずは自分に合うかどうかを試してみるのもよいでしょう。また、最後に紹介した「みんチャレ」のコンセプトに共通する部分もありますが、私たちが運営をしている「めどはぶ(Medical English Hub)」は、励まし合うチームをつくることでモチベーションを維持し、英語学習の習慣を身に付けることを目標にしています。興味のある方はぜひ、めどはぶの詳細もチェックしてみてください。

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<執筆者>

原田 洸 ( はらだ こう ) 氏マウントサイナイ・ベス・イスラエル病院 内科レジデント

[略歴]

2016年岡山大学医学部卒業。同大学病院にて初期臨床研修修了後、同大学病院、岡山市立市民病院にて内科専攻医として勤務。2020年に医学博士号を取得。岡山大学病院 国際診療支援センター 助教を経て、2021年に渡米しニューヨークで内科レジデントとして勤務。臨床業務の傍ら、医療従事者の英語学習をサポートする有志団体「めどはぶ」講師、東南アジアでの医療教育支援を行うNPO法人APSARA講師、経済メディアNewspicksのプロピッカーなどを務める。