TRK阻害薬ラロトレクチニブ、NTRK陽性肺がんに奏効/日本肺癌学会2021

まれな遺伝子変異である神経栄養因子チロシンキナーゼ受容体(NTRK)融合遺伝子を有するがんの治療薬として開発されたTRK阻害薬ラロトレクチニブは、NTRK融合遺伝子を有する肺がん患者にも奏効することが、第62回日本肺癌学会学術集会において名古屋大学の安藤雄一氏により発表された。
NTRK融合遺伝子陽性の固形がん患者159例を対象とした第I相および第II相のバスケット試験において、ラロトレクチニブは79%という高い奏効率(ORR)を示している。今回はこの中から肺がん症例を抽出し、ラロトレクチニブの有効性と安全性についての解析を行った。
解析対象患者20例の平均年齢は48.5歳であり、NTRK融合遺伝子を有する肺がん患者は一般の肺がんよりも若い年齢層である可能性が示唆された。NTRK融合遺伝子の解析には次世代シーケンサーが用いられ、NTRK1が80%、NTRK3が20%を占めていた。また、中枢神経系転移は50%の症例に認められ、50%が外科療法、45%が放射線療法、95%が全身化学療法を受けていた。なお、全体の50%にレジメン以上の全身化学療法歴があり、通常の化学療法が効きにくい症例集団であることが示唆された。
主な結果は以下のとおり。
・有効性に関する15例の解析が終了し、主要評価項目のORRは73%で、全ての症例で腫瘍の縮小を認めた(頭蓋内の腫瘍が縮小した症例もあり)。
・投与開始3か月以内の早期から良好なレスポンスが得られ、奏効期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)の中央値はそれぞれ33.9ヵ月、35.4ヵ月、40.7ヵ月であった。ただし、中枢神経転移のある症例のDoR、PFS、OSは、それぞれ17.4ヵ月、7.2ヵ月、17.2ヵ月となっていた。
・治療関連有害事象(TRAE)は16例(80%)に認められ、そのほとんどがGrade1〜2であり、2例(10%)にGrade3のTRAE(筋肉痛、過敏症、体重増加)を認めた。
・2例(10%)がGrade2の肝機能障害や好中球減少のためラロトレクチニブを減量したが、有害事象のために治療を中断した症例はなかった。
以上の結果を受け、「中枢神経転移例も含めてNTRK融合遺伝子陽性の肺がんに対して、ラロトレクチニブによる早期からの有効性と長期にわたる安全性が期待される」と安藤氏はまとめた。
(ケアネット)
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