抗精神病薬の最小有効維持用量への挑戦~10年間のフォローアップ調査

提供元:ケアネット

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公開日:2021/11/16

 

 初回エピソード精神疾患に対する抗精神病薬による長期治療の必要性については議論の余地がある。台湾・国立台湾大学のChen-Chung Liu氏らは、抗精神病薬治療の継続か、投与中止かの2つの案を超えた代替案があるかを調査した。Frontiers in Psychiatry誌2021年9月7日号の報告。

 本レトロスペクティブ観察研究では、2006年スタートの早期精神疾患研究に参加した患者のカルテデータを分析した。低用量の抗精神病薬投与で良好な機能を達成できている患者にとくに注目した。

 主な結果は以下のとおり。

・初回エピソード精神疾患患者81例のうち、55例(67.9%)は5年以上のフォローアップ期間を有していた。
・多くの患者は非情動性精神疾患に罹患していた(46例、83.6%)。
・55例中20例(36.4%)は、最終診察時までフルタイムで就業/教育を続けていた。そのうち15例は、最小有効用量以下の抗精神病薬投与を受けていた(クロルプロマジン[CP]換算量:200mg/日)。
・また、55例中10例(18.2%)は、維持療法期間中の抗精神病薬の投与量がCP換算量50mg/日未満と非常に少なく、このことが良好な機能と有意に関連していた。
・機能低下と関連していた因子は、男性、入院歴、クロザピン治療歴であった。
・抗精神病薬治療が行われていなかった患者は、非情動性精神疾患患者の2例のみであった。

 著者らは「抗精神病薬の長期使用を完全に中止できなかったとしても、多くの患者では、初回エピソード精神疾患後の維持治療において、抗精神病薬の低用量投与を実現し、良好な機能を達成することができると考えられる。維持療法中、抗精神病薬の用量を微調整することで再発予防と機能維持のバランスを最適に保つ治療を行うことは、臨床的に注目されるべき課題である」としている。

(鷹野 敦夫)