統合失調症の再発に対する抗精神病薬の減量リスク~メタ解析

提供元:ケアネット

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公開日:2021/07/02

 

 統合失調症の維持療法において抗精神病薬の減量は、副作用発現を最小限にとどめるという点で望ましい方法であると考えられるが、この戦略に対するエビデンスは十分ではない。デンマーク・University of Southern DenmarkのMikkel Hojlund氏らは、抗精神病薬の標準用量での治療と減量によるリスクとベネフィットの比較を行った。The Lancet. Psychiatry誌2021年6月号の報告。

 2020年6月17日までの成人の統合失調症または統合失調感情障害患者を対象とした24週以上のランダム化比較試験をEmbase、Medline、PsycINFO、Cochrane Libraryより検索した。ベースライン時に臨床的に安定している患者および同一抗精神病薬を2回以上投与し比較した研究を含めた。初回エピソードまたは治療抵抗性統合失調症を対象とした試験は除外した。標準用量は、国際コンセンサス研究によって推奨されている治療用量の下限よりも高用量と定義した。低用量(標準用量の下限の50~99%)および超低用量(標準用量の下限の50%未満)と標準用量との比較を行った。患者数、治療、性別、年齢、イベント数、精神病理学的スコアの変化に関する文献データは、2人以上の著者により独立して抽出した。不足しているデータを収集するため、研究者またはスポンサーに電子メールで連絡した。共通の主要アウトカムは、再発およびすべての原因による中止とした。研究レベルのデータは、ランダム効果モデルを用いてメタ解析し、二値データではリスク比(RR)、連続データではHedges' gを算出した。プロトコールは、OSF registriesに登録した。

 主な結果は以下のとおり。

・参考文献は、データベース検索で7,853件、関連研究のマニュアルレビューより1件を特定した。
・5,744件のアブストラクトの適格性を評価し、そのうち101件をフルテキストレビューにより評価した。
・適格基準を満たした22件(24試験、3,282例)をメタ解析に含めた。
・対象患者の年齢中央値は38歳(四分位範囲:36~40歳)、男性患者2,166例(65.9%)、女性患者1,116例(34.0%)であった。
・標準用量での治療と比較し、低用量では、再発リスクが44%上昇し(16試験、1,920例、RR:1.44、95%CI:1.10~1.87、p=0.0076、I2=46%)、すべての原因による中止リスクが12%上昇した(16試験、1,932例、RR:1.12、95%CI:1.03~1.22、p=0.0085、I2=0%)。
・標準用量での治療と比較し、超低用量では、再発リスクが72%上昇し(13試験、2,058例、RR:1.72、95%CI:1.29~2.29、p=0.0002、I2=70%)、すべての原因による中止リスクが31%上昇した(11試験、1,866例、RR:1.31、95%CI:1.11~1.54、p=0.0011、I2=63%)。
・低用量での治療と比較し、超低用量では、再発リスク(5試験、686例、RR:1.31、95%CI:0.96~1.79、p=0.092、I2=51%)およびすべての原因による中止(5試験、686例、RR:1.11、95%CI:0.95~1.30、p=0.18、I2=43%)に有意な差は認められなかった。
・二重盲検試験と非盲検試験、第1世代抗精神病薬と第2世代抗精神病薬、経口抗精神病薬と長時間作用型注射用抗精神病薬を比較したサブグループ解析においても、全体的な結果は同様であった。
・ほとんどの研究において、主に公的に入手可能な研究登録がないため、バイアスリスクはsome concerns(3段階の2)と分類された。

 著者らは「複数エピソードの統合失調症患者の維持療法における抗精神病薬の投与量は、急性期で推奨されている標準用量の範囲を下回るべきではない。このような患者における投与量の減量は、再発やすべての原因による中止リスクを高める可能性がある」としている。

(鷹野 敦夫)