肥満の原因は、さまざまな要因が指摘されている。中でも摂取エネルギーの過剰と運動不足では、どちらが肥満を起こす原因として重視しなければいけないのか、まだ結論は出ていない。この課題について米国デューク大学進化人類学科のAmanda McGrosky氏らの研究グループは、一定の生活様式と経済水準を有する約4,000例の成人について、エネルギー消費量と肥満の2つの指標を分析した。その結果、経済的発展に関連する肥満では、エネルギー消費量の減少よりも食事摂取量がはるかに大きな役割を果たしていたことがわかった。この結果は、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America誌2025年7月22日号に掲載された。
経済的発展は、体格、BMI、体脂肪率の増加と関連
研究グループは、6大陸34集団から4,213例の成人を対象に、狩猟採集民、遊牧民、農耕民、工業化社会など、さまざまな生活様式と経済水準を有する集団で、エネルギー消費量と肥満の2つの指標(体脂肪率とBMI)を分析した。
主な結果は以下のとおり。
・経済的発展は、体格、BMI、体脂肪率の増加と正の関連を示したが、同時に総エネルギー消費量、基礎代謝量、活動エネルギー消費量も増加していた。
・体格調整後の総エネルギー消費量と基礎代謝エネルギー消費量は、経済的発展の進展に伴い約6~11%減少していたが、集団間で大きく変動し、生活様式と密接に対応はしていなかった。
・体格調整後の総エネルギー消費量は、肥満の指標と負の相関を示したが、その関連性は弱く、経済的発展に伴う体脂肪率とBMI上昇の約10分の1を占めていた。
・推定エネルギー摂取量は、経済的発展をした集団で高く、データ利用が可能な集団(n=25)では、食事中の超加工食品の割合が体脂肪率と関連し、経済的発展に関連する肥満において、エネルギー消費量の減少よりも食事摂取量がはるかに大きな役割を果たしていることが示唆された。
(ケアネット 稲川 進)