トラスツズマブ デルクステカン、HER2変異NSCLCに有望(DESTINY-Lung01)/ESMO2021

提供元:ケアネット

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公開日:2021/09/28

 

 HER2抗体複合体(ADC)トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)による、既治療の非小細胞肺がん(NSCLC)に対する第II相試験DESTINY-Lung01の初回解析が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表され、有効な成績が示された。

 NSCLCにおけるHER2遺伝子変異は約3%と多くはない。標的治療薬は承認されておらず、検査は行われない。治療には化学療法が使われるが、効果は限定的である。

 そのようななか、第II相DESTINY-Lung01試験の中間解析で良好な成績を示したことから、T-DXdに新たな選択肢としての期待がかかる。

 DESTINY-Lung01試験は多施設国際2コホート研究。

・対象:転移を有する標準療法不応のHER2発現またはHER2変異陽性の非扁平上皮NSCLC
・コホート1:HER2過剰発現患者 T-DXd 6.4mg/kg 3週間ごと(n=49)
・コホート1a:HER2過剰発現患者 T-DXd 5.4mg/kg 3週間ごと(n=41)
・コホート2:HER2遺伝子変異陽性患者 T-DXd 6.4mg/kg 3週間ごと(n=42)
・コホート2拡張:HER2遺伝子変異陽性患者 T-DXd 6.4mg/kg 3週間ごと(n=49)
・評価項目:
[主要評価項目]独立中央委員会(ICR)評価による全奏効率(ORR)
[副次評価項目]奏効期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、病勢制御率(DCR)、安全性

 主な結果は以下のとおり。

HER2変異NSCLCは91例登録され、T-DXdの投与を受けた。
・データカットオフ時(2021年5月3日)の追跡期間中央値は13.1ヵ月であった。
・無症候性中枢神経系(CNS)転移は36.3%に認められた。
・98.9%が全身治療を受けており、前治療数の中央値は2であった。
・前治療の内訳はプラチナベース化学療法94.5%、PD-(L)1阻害薬65.9%、プラチナベース化学療法+PD-(L)1阻害薬62.6%、ドセタキセル19.8%、HER2-TKI14.3%であった。
・ICR評価のconfirmed ORRは54.9%、DCRは92.3%であった(CR1例、PR49例、SD34例)。
・サブグループのORRは、脳転移の有無、HER2変異サブタイプを問わず、良好であった。
・DoR中央値は9.3ヵ月、PFD中央値は8.2ヵ月、OS中央値は17.8ヵ月であった。
・治療関連有害事象(TEAE)は96.7%で発現した。
・薬物関連間質性肺疾患(ILD)は24例24.1%で発現した。そのうち、75%はGrade1および2であった。

 T-DXdは、既治療のHER2変異陽性NSCLC患者に良好かつ持続的な有効性を示した。安全性プロファイルも以前の研究と一致しており、間質性肺疾患についても管理可能なものであった。

 この研究は、T-DXdがこれらの集団に対する、新たな標準治療としての可能性をを支持するものだ、と発表者は締めくくった。

 この結果はNEJM誌に同時公開された。

(ケアネット 細田 雅之)

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