軽症高血圧患者の認知症リスクに対する血圧コントロールの影響

提供元:ケアネット

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公開日:2021/09/13

 

 高血圧は、認知症リスクを上昇させるといわれているが、低リスクの軽症高血圧患者における認知症リスクに関する研究は、これまでほとんど行われていなかった。韓国・延世大学校のChan Joo Lee氏らは、グレードIの高血圧患者の認知症リスクに対する血圧コントロールの影響について調査を行った。Journal of Hypertension誌2021年8月1日号の報告。

 National Health Insurance Service National Health Examinee cohortより、2005~06年にグレードI高血圧(140~159/90~99mmHg)と診断された患者12万8,665例を対象とした。対象患者は、血圧コントロール群(フォローアップ期間中の平均血圧:140/90mmHg未満)と非血圧コントロール群(平均血圧:140/90mmHg以上)に分類し、2015年までフォローアップを行った。認知症リスクは、傾向スコアで調整した後、Cox比例ハザードモデルを用いて推定した。

 主な結果は以下のとおり。

・平均血圧は、血圧コントロール群(4万9,408例)で131/81mmHg、非血圧コントロール群(9万9,257例)で144/87mmHgであった。
・認知症発症率は、血圧コントロール群で4.9/1000人年、非血圧コントロール群で8.1/1000人年であった。
・血圧コントロール群では、全認知症、アルツハイマー型認知症、血管性認知症のリスクが非血圧コントロール群よりも低かった。
・血圧コントロール群では、すべての年齢において血管性認知症リスクが低く、とくに60歳未満の層で顕著であった。
・認知症リスクが最も低いと考えられる最適な血圧レベルは、収縮期血圧130~140mmHg未満、拡張期血圧70~80mmHg未満であった。

 著者らは「低リスクの軽症高血圧患者の場合でも、血圧コントロールを行うことにより、アルツハイマー型認知症や血管性認知症などの認知症リスクの有意な減少が認められた」としている。

(鷹野 敦夫)