英国・マンチェスター大学のAdrian Heald氏らは、精神疾患1年目における抗精神病薬による治療が、その後5年間の体重増加に及ぼす影響を分析した。Neurology and Therapy誌2025年8月号の報告。
対象は、精神症、統合失調症、統合失調感情障害、妄想性障害、情動精神症と初めて診断された患者1万7,570例。5年間の体重変化を調査し、診断1年目に処方された抗精神病薬との関連を30年にわたり評価した。
主な結果は以下のとおり。
・初回抗精神病薬処方時の年齢は、大半が20〜59歳(65%)であった。
・ベースライン時の平均BMIは、男女共に同様であった。
・BMIの大幅な増加が認められた。とくに肥満患者(BMI:30kg/m2以上)では、体重カテゴリーの変化が最も大きく、女性では30〜43%、男性では26〜39%に増加した。一方、対象患者の42%では、体重の有意な増加は認められなかった。
・ペルフェナジン、フルフェナジン、amisulprideを処方された患者は正常BMIを維持する可能性が最も高く、アリピプラゾール、クエチアピン、オランザピン、リスペリドンを処方された患者は、最初の1年間で正常BMIから体重増加、過体重(BMI:25.0〜29.9 kg/m2)、肥満(BMI:30.0kg/m2以上)に移行する可能性が最も高かった。
・定型抗精神病薬であるthioridazine、クロルプロマジン、flupenthixol、trifluoperazine、ハロペリドールは、BMIカテゴリーの変化の可能性が中程度であると評価された。
・多変量回帰分析では、体重増加と関連する因子は、若年、女性、1年目に処方された抗精神病薬数、アリピプラゾール併用(75%併用処方または第2/第3選択薬としての使用を含む)オランザピン併用、thioridazine併用(各々、p<0.001)、リスペリドン併用、クエチアピン併用(各々、p<0.05)であった。
・体重増加7%以上の多変量ロジスティック回帰分析では、特定の薬剤は類似しており、薬剤のオッズ比はクエチアピンの1.09(95%信頼区間[CI]:1.00〜1.21)からthioridazineの1.45(95%CI:1.20〜1.74)の範囲であった。
著者らは「診断1年目に複数の抗精神病薬を処方された患者および若年女性では、体重増加リスクが高かった。一部の定型抗精神病薬は、非定型抗精神病薬と同程度の体重増加との関連が認められた。なお、40%以上で体重増加は認められなかった」と結論付けた。
(鷹野 敦夫)