COVID-19ワクチン接種率向上にリマインダーが有効

提供元:ケアネット

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公開日:2021/09/06

 

 新型コロナウイルスのワクチン接種が進むにつれ、ワクチンの効果や安全性に疑問を持ち接種を避けるいわゆる「ワクチン忌避者」の存在が各国で問題となっている。忌避者を接種につなげるために効果的なコミュニケーション戦略についての研究結果が、Nature誌オンライン版2021年8月2日号に掲載された。

 UCLA アンダーソン・スクール・オブ・マネジメントで行動経済学を専門とするHengchen Dai氏らによる本研究では、メールによるリマインダーとその内容がワクチン接種率向上にどの程度寄与するのかを調査した。

 研究者らは、2021年1月29日からUCLAの医療システムから抽出したワクチン接種対象者に対象に、接種予約の案内メール送付から1日後(n=9万3,354例)および8日後(n=6万7,092例)にリマインダーを配信した。解析は5月25日に終了した。主要評価項目はリマインダー受信後6日以内の初回接種の予約、副次評価項目は受信後4週間以内の初回接種だった。

 登録者は、リマインダーを受け取る群(受信群)と受け取らない群(不受信群)に、4:1の比率で無作為に割り付けられた。受信群にはリマインダーの内容によって行動が変わるかを調査するために、さらに2つの要素を追加した。1つめは「心理的所有感を誘発するメッセージ(UCLA Health:(参加者の名前)さん、COVID-19ワクチンがUCLA Healthで入手できるようになりました。uclahealth.org/scheduleで予防接種の予約をして、今すぐ接種を受けてください)」、もう1つは「ワクチンの有効性に関する2分間の動画メッセージ」で2要素の組み合わせによって4群に無作為に割り付けられた(基本リマインダーのみ:1万8,629、所有感メッセージ:1万8,592、有効性メッセージ:1万8,757、所有感+有効性メッセージ:1万8,627)。1回目のリマインダーから7日以内に予約・接種した人等を除いた6万7,092例を対象に2回目のリマインダーを送付した。全群において年齢、性別、人種のバランスがとれていることを確認した。

 主な結果は以下のとおり。

・1回目のリマインダーによって、受信群の不受信群と比較した予約率は6.07%、接種率は3.57%上昇した。2回目のリマインダーによって、各1.65、1.06%上昇した。
・1回目のリマインダーでは予約・接種共に所有感メッセージが有効だった。一方で、有効性に関するメッセージには効果が見られなかった。
・受信群と不受信群の初回接種率の差は8週間後でも続いていた。

 研究者らは「全タイプのリマインダーが接種率を上昇させることがわかり、特に心理的所有感を誘発するメッセージが有効なことがわかった。2回目のリマインダーの効果は1回目に比べて落ちたが、対象にワクチン接種に懐疑的な人の割合が増えているだろうことを考慮すると、一定の効果を発揮した。また、リマインダーを受け取ることの効果が長期に持続したという事実は、この間に対象者が多くの情報に触れていたであろうことを考慮すると驚きに値する」とし、「行動科学的な洞察を使うことで、ワクチン接種を低コストで増加、スピードアップすることができる」としている。

(ケアネット 杉崎 真名)