統合失調症と双極性障害を鑑別する多遺伝子リスクスコアと病前知能との関連

提供元:ケアネット

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公開日:2021/09/03

 

 統合失調症と双極性障害は、臨床的および遺伝的に類似している疾患であるにもかかわらず、統合失調症患者の知能障害は、双極性障害患者よりも重篤である。統合失調症と双極性障害を鑑別する遺伝子座(つまり統合失調症に特異的なリスク)は特定されている。統合失調症に特異的なリスクに対する多遺伝子リスクスコア(PRS)は、健康対照者よりも統合失調症患者で高くなるが、知能障害に対する遺伝的リスクの影響は、よくわかってない。岐阜大学の大井 一高氏らは、統合失調症に特異的なリスクが、統合失調症および健康対照者の知能障害を予測するかについて調査を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌2021年7月23日号の報告。

 統合失調症と双極性障害に関する大規模ゲノムワイド関連研究のデータセットの小児期知能(1万2,441例)および成人期知能(28万2,014例)のデータを用いてPRSを算出した。統合失調症患者130例と健康対照者146例についてゲノムワイド関連研究から得られたPRSを算出した。統合失調症患者と健康対照者の病前および現在の知能や知能低下を測定した。PRSと知能との関連を調査した。

 主な結果は以下のとおり。

・統合失調症に特異的なリスクに対するPRSの高さは、統合失調症患者と健康対照者の病前知能の低さと関連していた(β=-0.17、p=0.00412)。
・診断ステータスを調整した後でも、この関連は有意なままであった(β=-0.13、p=0.024)。
・統合失調症に特異的なリスクに対するPRSと現在の知能または知能低下との間に有意な関連は認められなかった(p>0.05)。
・小児期知能のPRSは、健康対照者よりも統合失調症患者のほうが低かったが、病前および現在の知能や知能低下との有意な関連は認められなかった(p>0.05)。

 著者らは「この結果は、統合失調症と双極性障害を鑑別する遺伝的因子が、統合失調症の病因および/または病前の知能障害、すなわち結晶性知能障害を介して、両疾患の病理学的差異に影響を及ぼしている可能性が示唆された。一方、小児期知能の遺伝的因子は、統合失調症の病因に影響を及ぼす可能性はあるが、知能障害を介した影響は認められなかった」としている。

(鷹野 敦夫)