抗精神病薬LAIの悪性症候群リスク

提供元:ケアネット

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公開日:2021/07/28

 

 精神疾患に対する抗精神病薬の長時間作用型(LAI)使用は、いくつかの良いアウトカムをもたらすが、重篤な副作用の1つである悪性症候群が発生した場合、LAIの使用がデメリットとなるかはわかっていない。米国・ザッカーヒルサイド病院のDaniel Guinart氏らは、統合失調症および/または統合失調感情障害と診断された患者における悪性症候群の発生率とアウトカムの予測因子について調査を行った。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2021年5月20日号の報告。

 フィンランドのヘルスケアエンカウンタの代表的なデータベースを用いて、1972~2017年に統合失調症および/または統合失調感情障害と診断された患者を対象に、悪性症候群の発生率およびアウトカムの予測因子を調査した。抗精神病薬の剤型(LAIと経口)およびクラス(第1世代[FGA]と第2世代[SGA])による違いを調査するため、ネステッドケースコントロールデザインを用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・分析対象は、悪性症候群が認められた患者172例および性別、年齢、診断が一致した対照群1,441例(年齢:58.8±13.1歳、男性の割合:59.9%)。
・悪性症候群の発生率は、1.99/1万人年(1.98~2.00)であった。
・悪性症候群の発生率は、抗精神病薬の剤型およびクラスで違いが認められなかった。
 ●LAI対経口の調整オッズ比[aOR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.59~1.33
 ●FGA経口対SGA経口のaOR:1.08、95%CI:0.66~1.76
 ●FGA経口対FGA-LAIのaOR:0.89、95%CI:0.52~1.53
 ●FGA経口対SGA-LAIのaOR:1.35、95%CI:0.58~3.12
・悪性症候群のリスク因子は、以下のとおりであった。
 ●抗精神病薬数の増加(オッズ比[OR]:5.00、95%CI:2.56~9.73)
 ●抗精神病薬数の減少、切り替え(OR:2.43、95%CI:1.19~4.96)
 ●抗精神病薬の用量の多さ(規定された1日投与量の2倍超のOR:3.15、95%CI:1.61~6.18)
 ●抗コリン薬の併用(OR:2.26、95%CI:1.57~3.24)
 ●リチウムの併用(OR:2.16、95%CI:1.30~3.58)
 ●ベンゾジアゼピンの併用(OR:2.02、95%CI:1.44~3.58)
 ●心血管疾患の合併(OR:1.73、95%CI:1.22~2.45)
・悪性症候群が認められた患者の4.7%は、30日以内に死亡しており、抗精神病薬の剤型間による違いは認められなかった。また、1年以内では15.1%であった。
・悪性症候群後に抗精神病薬を再投与した患者119例のうち、5例(4.2%)で再発が認められた。抗精神病薬再投与後の再発までの期間中央値は、795日(範囲:77~839日)であった。

 著者らは「悪性症候群は、生命に影響を及ぼす可能性のあるリスクとなりうる。今回の結果は、死亡率を含む悪性症候群の発症またはアウトカムに関連するLAIの安全性に対する懸念を和らげるうえで役立つであろう」としている。

(鷹野 敦夫)