腫瘍崩壊症候群(TLS)を呈した成人において、ラスブリカーゼによる早期治療は、投与が遅れた場合や投与されなかった場合と比較し、腎代替療法を要する急性腎障害または死亡のリスクを約3分の1減少させることが示された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のTushar Shenoy氏らが、標的試験エミュレーション研究「Study of the Treatment and Outcomes in Patients with Tumour Lysis Syndrome:STOP-TLS」の結果を報告した。これまでの研究で、ラスブリカーゼはTLS患者において血清尿酸値の急速な低下にきわめて有効であることが示されているが、ラスブリカーゼがこうした患者の臨床アウトカムを改善するかどうかを厳密に検証した研究はなかった。BMJ誌2026年7月23日号掲載の報告。
腎代替療法を要する急性腎障害または死亡リスクを標的試験エミュレーションで評価
研究グループは、2014~23年に米国9州の大規模医療センター10施設に属する36病院において、活動性の血液悪性腫瘍あるいは転移を有する固形腫瘍を有し、腫瘍量が多い、または検査所見および臨床所見がTLSに合致する18歳以上の入院患者を対象に、TLS発症後12時間以内にラスブリカーゼによる治療を開始したか否かに基づき患者を分類し、早期ラスブリカーゼ投与群と早期ラスブリカーゼ非投与群を比較する標的試験エミュレーションを実施した。
主要評価項目は、TLSによる入院中の腎代替療法を要する急性腎障害または死亡の複合とし、重要な副次評価項目は90日死亡率とした。
主要解析では、逆確率治療重み付け(IPTW)により交絡因子を調整したロジスティック回帰モデルを用い、早期投与群と早期非投与群の治療効果を推定した。
TLS発症後12時間以内のラスブリカーゼ投与でリスク低下
2014~23年にTLSで入院した連続症例2,096例のうち、適格基準を満たした1,276例が解析対象となった。このうち705例(55.3%)がTLS発症後12時間以内にラスブリカーゼの投与を受けた(早期投与群)。残る571例は早期非投与群で、このうち193例はTLS発症後12時間を経過した後にラスブリカーゼを投与され、378例はラスブリカーゼを投与されなかった。
早期投与群において、ラスブリカーゼ投与までの時間は中央値で5.0時間(四分位範囲:3.1~7.5)であった。早期投与群は早期非投与群に比べて尿酸値が高かったが(中央値はそれぞれ0.71mmol/L、0.59mmol/L)、IPTW適用後の重症度は両群間で類似していた。
主要評価項目の複合イベントは、IPTW適用後の早期投与群で32.7%(230/704例)、早期非投与群で42.0%(244/581例)に発生し、ラスブリカーゼの早期投与は腎代替療法を要する急性腎障害または死亡のリスク低下と関連した(補正後オッズ比[OR]:0.67、95%信頼区間[CI]:0.52~0.88、絶対リスク群間差:-9.3%、95%CI:-15.4~-3.0、p<0.001)。これらの結果は、複数の感度分析および90日死亡率(補正後OR:0.71、95%CI:0.54~0.94)でも一貫していた。
なお、著者らは、残余交絡の可能性が除外できないこと、本研究はTLSの予防ではなく発症後のTLS治療に焦点を当てたものであり、ラスブリカーゼの予防的投与を受けた患者は除外されたこと、すでに腎代替療法を受けているTLS患者に対するラスブリカーゼの臨床的有効性については検討しなかったことなどを研究の限界として挙げている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)