抗精神病薬による体重増加と臨床効果との関係

提供元:ケアネット

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公開日:2021/06/29

 

 これまでの研究において、抗精神病薬で治療中の慢性期統合失調症患者では、体重増加と精神病理学的改善効果の関連が示唆されている。しかし、多くの交絡因子の影響により、その結果は一貫していない。中国・首都医科大学のYing Qi Chen氏らは、抗精神病薬未治療の初回エピソード統合失調症患者において、体重増加が抗精神病薬の治療効果と関連しているかについて、調査を行った。The Journal of Clinical Psychiatry誌2021年5月11日号の報告。

 抗精神病薬未治療の初回エピソード統合失調症患者526例と健康対照群313例を対象に、8週間のプロスペクティブ研究を実施した。研究実施期間は、2012年1月~2018年12月。治療効果は、ベースライン時およびフォローアップ時の陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)により評価した。体重は、ベースライン時と治療開始8週間後に測定した。

 主な結果は以下のとおり。

・抗精神病薬治療によりPANSSスコアは、以下のように有意な改善が認められた。
 ●陽性尺度:-10.40(95%CI:-9.31~-10.60)
 ●陰性尺度:-5.01(95%CI:-4.43~-5.54)
 ●総合精神病理尺度:-13.01(95%CI:-12.01~-14.01)
 ●合計スコア:-28.53(95%CI:-26.73~-30.33)
・抗精神病薬未治療の初回エピソード統合失調症患者の平均体重は、2.89kg(95%CI:2.55~3.22)の増加が認められたが、健康対照者の平均体重よりも依然として低値であった。
・抗精神病薬治療により体重が7%以上増加した患者の割合は、38.2%であった。
・体重増加とPANSS陽性尺度、総合精神病理尺度、合計スコアの減少との間に、正の相関が認められた(各々、p<0.05)。
・多重線形回帰分析では、ベースライン時の体重、PANSS合計スコアの減少、性別と治療後の体重増加との間に有意な関連が認められた。

 著者らは「抗精神病薬未治療の初回エピソード統合失調症患者に対する8週間の抗精神病薬治療後の体重増加は、臨床症状改善と有意な関連が認められた」としている。

(鷹野 敦夫)