統合失調症における抗精神病薬治療と抗うつ作用~メタ回帰分析

統合失調症の陽性症状改善には、抗精神病薬が有用である。しかし、抗精神病薬の抗うつ効果および統合失調症の他の症状への影響については、よくわかっていない。福島県立医科大学の三浦 至氏らは、抗精神病薬の抗うつ効果が統合失調症の特定の症状に対する有効性と関連するかについて検討を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2020年11月5日号の報告。
成人統合失調症患者を対象として抗精神病薬の抗うつ効果を検討したランダム化二重盲検試験(RCT)を、電子データベースより検索した。ベースラインからの抑うつ症状の平均変化量についてメタ解析を実施し、他の症状への影響を調査するためメタ回帰分析を行った。
主な結果は以下のとおり。
・35件のRCT(1万3,890例)をメタ解析に含めた。
・全体として、抗精神病薬は、プラセボと比較し、抑うつ症状の軽減に対する効果が認められた。そのエフェクトサイズは、小~中程度であった(標準化平均差[SMD]:-0.27、95%CI:-0.32~-0.22、p<0.001)。
・クロルプロマジン、ハロペリドール、ziprasidoneを除く抗精神病薬は、プラセボと比較し、有意な抗うつ効果が認められた(SMD:-0.19~-0.40)。
・抗うつ効果の高さは、PANSS/BPRS合計スコア(β=0.618、p<0.001)、陽性症状(β=0.476、p<0.001)、陰性症状(β=0.689、p<0.001)、PANSS総合精神病理尺度(β=0.603、p<0.001)の改善効果の高さと有意な関連が認められた。
著者らは「ziprasidoneを除く第2世代抗精神病薬は、成人統合失調症患者の抑うつ症状改善に、小~中程度のエフェクトサイズを有することが示唆された。抗精神病薬の抗うつ効果は、他の症状の改善と有意な関連が認められ、陰性症状の改善と最も強い関連が認められた」としている。
(鷹野 敦夫)
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