うつ病から双極性障害への転換に対する早期予測因子~コホート研究

提供元:ケアネット

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公開日:2020/05/21

 

 うつ病と双極性障害は、どちらも主要な気分障害であるが、治療戦略や予後が異なる。双極性障害患者では、初期でみられるうつ症状によりうつ病と診断されうることが、その後の治療結果に影響を及ぼす可能性がある。これまでの研究では、うつ病と診断された患者のうち、時間経過とともに双極性障害を発症する患者が少なくないと示唆されている。このような双極性障害は、治療抵抗性うつ病の一因となる可能性がある。台湾・国立中正大学のYa-Han Hu氏らは、人口ベースのコホート研究を実施し、10年間のフォローアップ期間中にうつ病から双極性障害へ診断が変更された患者の割合およびその危険因子について調査を行った。さらに、うつ病から双極性障害へ転換するリスク層別化モデルの開発を試みた。JMIR Medical Informatics誌2020年4月3日号の報告。

 台湾全民健康保険研究データベースを用いて、2000年1月~2004年12月に新規でうつ病と診断された患者を対象に、レトロスペクティブコホート研究を実施した。すべてのうつ病患者を、次のいずれかの条件を満たすまでフォローアップした。(1)精神科医による双極性障害の診断、(2)死亡、(3)2013年12月まで。すべてのうつ病患者を、フォローアップ期間中の双極性障害への転換に従って、転換群または非転換群に振り分けた。うつ病から双極性障害へ転換するリスク層別化モデルを作成するため、最初の6ヵ月間の6つの変数(患者の特性、身体的合併症、精神医学的合併症、ヘルスケアの使用状況、疾患重症度、向精神薬の使用)を抽出し、決定木分析(classification and regression tree:CART法)を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・対象は、うつ病患者2,820例。
・フォローアップ期間中に双極性障害と診断された患者は536例(19.0%)であった。
・CART法により双極性障害転換リスクの有意な予測因子は、以下の5つであった。
 ●最初の6ヵ月間で使用された抗精神病薬の種類
 ●最初の6ヵ月間で使用された抗うつ薬の種類
 ●精神科外来通院の合計回数
 ●受診1回当たりに使用されたベンゾジアゼピンの種類
 ●気分安定薬の使用
・双極性障害への転換に関し、このCART法によるリスクによって、高リスク群、中リスク群、低リスク群に分類可能であった。
・高リスク群では、うつ病患者の61.5~100%は双極性障害と診断された。
・低リスク群では、うつ病患者の6.4~14.3%のみが双極性障害と診断された。

 著者らは「CART法により、双極性障害へ転換する5つの有意な予測因子が特定された。これらの予測因子を用いた単純なプロセスにより転換リスクの分類は可能であり、本モデルは双極性障害の早期診断のために日々の臨床診療に適用可能である」としている。

(鷹野 敦夫)