統合失調症と双極性障害における視床と皮質の解剖学的結合異常

提供元:ケアネット

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公開日:2020/04/30

 

 統合失調症では、前頭前皮質(PFC)を含む視床と皮質の解剖学的結合異常が認められる。PFC視床回路に依存する実行機能の認知機能障害を含む表現型の重複は、視床皮質系の解剖学的結合異常が、精神病性双極性障害にまで及ぼす可能性が示唆されている。米国・ヴァンダービルト大学のJulia M. Sheffield氏らは、この仮説をテストし、視床皮質の結合異常が病気のどの段階で現れるかを調査した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2020年3月27日号の報告。

 初期の精神疾患患者62例を含む精神病性疾患患者124例(統合失調スペクトラム障害:75例、精神病性双極性障害:49例)および健常対照者70例を対象に、拡散強調画像データを収集した。皮質の主要部位と視床の解剖学的結合は、確率論的トラクトグラフィー(probabilistic tractography)を用いて定量化し、群間比較を行った。PFCと視床の解剖学的結合と実行機能の認知機能との関連は、回帰分析を用いて検討した。

 主な結果は以下のとおり。

・精神疾患における解剖学的結合は、PFCと視床で低下が認められ、体性感覚脂質と視床で上昇が認められた。
・フォローアップ分析では、統合失調症と精神病性双極性障害のいずれにおいても、上記の所見が認められた。
・PFCと視床における解剖学的結合の低下は、初期段階と慢性期において認められた。
・PFCと視床における解剖学的結合の低下は、実行機能の認知機能障害との関連が認められなかった。

 著者らは「視床と皮質の解剖学的結合異常は、精神疾患の初期段階で認められる横断的な特徴である。精神疾患患者における視床と皮質の解剖学的結合異常と全範囲の機能との因果関係を解明するためには、さらなる研究が求められる」としている。

(鷹野 敦夫)