飲酒と喫煙に対する健康政策はがん死を減らせるのか

提供元:ケアネット

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公開日:2019/12/05

 

 長期の飲酒と喫煙はがんの危険因子として認識されているが、飲酒と喫煙に対する公衆衛生政策ががんの死亡率に与える影響は検討されていない。今回、オーストラリア・メルボルン大学のHeng Jiang氏らが、オーストラリアにおける1950年代~2013年の飲酒および喫煙に関する政策とがん死亡率の変化との関連を検討した結果、いくつかの政策変更が飲酒・喫煙の変化とその後20年間のがん死亡率の変化に関連することが示された。BMC Medicine誌2019年11月号に掲載。

 本研究では、アルコールとタバコの1人当たり消費量の1911~2013年における集団ベースの時系列データと、1950年代~2013年の頭頸部(口唇、口腔、咽頭、喉頭、食道)がん、肺がん、乳がん、大腸および肛門がん、肝臓がん、がん全体の死亡率を、オーストラリア統計局(Australian Bureau of Statistics)、ビクトリア州がん協会(Cancer Council Victoria)、WHOがん死亡データベース(WHO Cancer Mortality Database)、オーストラリア保健福祉研究所(Australian Institute of Health and Welfare)から収集した。アルコールとタバコの消費量の変化と重大な関係がある政策を初期モデルで特定後、主要な公衆衛生政策やイベントに基づいて推定遅延を伴う介入ダミーを作成し、時系列モデルに挿入して、政策変更とがん死亡率との関係を推定した。

 主な結果は以下のとおり。

・1960年代のアルコール販売免許の自由化は、飲酒人口の増加とその後の男性のがん死亡率の増加と有意に関連していた。
・1976年以降のオーストラリアにおける任意呼気検査の導入は、飲酒人口の減少とその後の男女両方のがん死亡率の減少に関連していた。
・1962年と1964年のタバコに関する英国と米国の公衆衛生報告書の発表と1976年のテレビとラジオでのタバコ広告禁止は、オーストラリアにおけるタバコ消費量の減少とその後のがん(肝臓がん除く)の死亡率の減少に関連していた。
・1960年代~1980年代の飲酒と喫煙に関する政策の変更は、女性より男性でより大きな変化と関連していた(とくに頭頸部がん、肺がん、大腸がん)。

(ケアネット 金沢 浩子)